カンジキウサギ、温暖化に適応できる?

2014.07.24
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
周囲の景色から浮いている白い体毛のカンジキウサギ(カナダで撮影)。

Photograph by Robert Harding. World Imagery/Corbis
 雪が全くない場所で真っ白なカンジキウサギがじっと動かず警戒しているのは奇妙な光景だ。 北アメリカの山岳地帯の茶色い土や枯葉を背景に白い体が浮かび上がり、まるでオオヤマネコなどの捕食者に“私を食べて”と言っているようなものだ。

 アメリカ、ノースカロライナ州立大学のスコット・ミルズ(Scott Mills)氏とマーケタ・ジモワ(Marketa Zimova)氏はこうした現象を“ミスマッチ”と呼ぶ。季節が秋から冬に移るとき、茶色から白に変わるカンジキウサギの体毛が周囲の景色に溶け込んでいない状況だ。

 カンジキウサギはたいてい、体毛の色を変えるタイミングをうまく計っているように見える。ミスマッチが起きてもせいぜい1週間ほどだ。

 しかし、ミルズ氏とジモワ氏はモンタナ州ミズーラで16日まで開催されていた北米保全生物学会(North America Congress for Conservation Biology)で、こうした“間が悪い”ミスマッチは気候変動の影響ではるかに起こりやすくなり、命取りになりかねないと警告している。

 カンジキウサギは体毛の“生え変わり”のタイミングを気温や雪の有無より日の長さで決めているようだ。

 ミルズ氏とジモワ氏はカンジキウサギの個体に条件に応じて生え変わりのタイミングを調整する能力はほとんどないと考えている。地球温暖化が進むと初雪の時期が遅くなり、逆に雪解けの時期が早まるため、21世紀が終わるころには最大8週間のミスマッチが生じる恐れがある。

◆適応

 ただし、たくましいカンジキウサギがついに絶滅の日を迎えるというわけではない。カンジキウサギは繁殖力が強いため、進化して生え変わりのタイミングを早めることができれば、個体数の激減は免れるかもしれないという。

 そうした進化が起きるには3つの条件がそろわなければならないと、ジモワ氏は説明する。生え変わりのタイミングが遺伝すること、すでにタイミングに多様性があること、ミスマッチに代償があることだ。

 3つの条件がそろっていると仮定した場合、ミスマッチを起こした個体は高い確率で捕食され、その結果、生え変わりのタイミングが遅い個体が生き残り、子孫に遺伝子を受け継ぐことになる。そして、時とともに平均的な生え変わりの時期が後ろにずれていく。 ジモワ氏は14日、3つの条件のうち2つの証拠を提示した。

 ジモワ氏はモンタナ州の2カ所で200匹近くのカンジキウサギに追跡用の首輪を付け、3年にわたって定期的に様子を確認した。そして、体毛が生え変わるタイミングに多様性があることを証明してみせた。

 多様性はジモワ氏が調べた以外の個体群にも存在する可能性が高い。カナダ、バンクーバーにあるブリティッシュコロンビア大学の生物学者チャールズ・クレブス(Charles Krebs)氏によれば、ユーコン準州で調べている個体群にも同様のパターンが見られるという。

「同じ時期でも、90%が白い個体群と5%が白い個体群に分かれる」。

 ジモワ氏はミスマッチに紛れもなく代償があることも証明してみせた。完全にミスマッチが生じている時期には、死亡率が7%高まることがわかった。今後ミスマッチが増えることを考えると、進化がなかったと仮定した場合、21世紀が終わるまでに個体数の減少が深刻な状況に陥る可能性が高い。

 つまり、ミスマッチの代償は大きく、自然の変異はかなり起きているということだ。

Photograph by Robert Harding. World Imagery/Corbis

文=Emma Marris in Missoula, Montana

  • このエントリーをはてなブックマークに追加