食糧危機を救う? 日本の野菜工場

2014.07.18
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世界最大の「植物工場」で野菜の世話をする従業員(2014年7月2日)。日本の宮城県にあるこの工場は、1日1万個のレタスを生産している。

Photograph by Kyodo via AP
 日本企業が始めた未来的な方法の農業が、人類の食料生産に革命を起こすかもしれない。宮城県にある閉鎖されたソニーの工場が生まれ変わった。その姿は、未来の農場のモデルとなる大きな可能性を秘めている。 世界最大の屋内農場を建設したのは、植物生理学者の嶋村茂治氏が代表取締役を務める株式会社みらいだ。広さ約2300平方メートルの工場で、未来の光景のような栽培ベッドの野菜がLED照明17500本の光を浴びて育つ。無菌の環境であり、殺虫剤は必要ない。成果はすでに出ており、毎日約1万個の新鮮なレタスが収穫されている。

 独自の「植物工場」は非常に効率性が高く、廃棄レタスは露地栽培での30~40%から3%未満にまで削減されている。芯のないレタスが廃棄されるだけだ。

 ナショナル ジオグラフィックはこのほど嶋村氏にインタビューを行い、画期的な食料工場と屋内農場が世界的な食糧危機の解決策となる可能性について話を聞いた。

◆この新事業の発想はどこから来たのですか?

 日本は40~50年来、農業を工場の形で行う分野の研究開発に関心がありました。

 当社は、2011年の東日本大震災で大きな被害を受けた場所に植物工場を作りました。日本では野菜の国内供給率が低下しており、輸入に大きく依存しているという問題をどうしたら解決できるのかという懸念が広くあったためです。

 特にこの地を選んだのは、野菜は今やどんな場所でも生産できると証明したかったからです。第二に、被災地が再び経済的に発展するのを助けたいという思いがありました。最後に、将来的にこの工場が成功すれば、我々が開発した技術を世界中に輸出する可能性も見えてくるだろうと考えました。

◆世界的な食料不足が危惧されていますが、この植物工場は食料生産の未来にどんな影響を与えるでしょうか?世界的な食糧不足の打開策となる可能性はありますか?

 現在、世界は70~72億人の人口を抱え、そのうち約8~9億人が飢餓に苦しんでいるか、それに近い状態にあります。どうしたらもっと食糧を増産でき、こうした深刻な状況を緩和できるか、世界中の人々はみな思いを巡らせています。

 食糧生産には水が大きな役割を果たすことは周知の通りです。当社が開発した技術なら、従来の野菜栽培に比べて水の使用量は1%未満で済みます。したがって、野菜を工場の環境で育てれば水を節約でき、その水を別の場所での穀物の増産に役立てられます。

 この方法を使い、当社が植物工場を世界各地に建設できれば、世界中の人口を養うための食糧生産を支援できることになります。これが、我々が本当に実現したいことなのです。

◆そんなに少量の水を、どのようにやりくりして使うのですか?

 従来の栽培方法では、水が土壌から漏れ出たり、空気中に蒸発したりして多くが無駄になります。工場の閉鎖された環境では、与えた水は全て植物が吸収します。これが一つ目の特長です。

 加えて、植物自身が空気中に蒸散させた水蒸気も集めることができ、集めた水を再利用しています。仕組みは地球の水循環と同様です。地球上の生物から出された水蒸気が集まり、雲となり、雨として再び地表に降り注ぐというのが地球の水循環サイクルですが、当社の工場もちょうど同じように機能しています。閉鎖された空間で水が集められ、ろ過され、再利用されます。

◆工場の照明設備は日本GEが特別に設計したものですが、どのような特徴があるのでしょうか?

 使用しているのはLED(発光ダイオード)照明で、植物の成長に非常に適しています。日本GEが当社向けに開発した特別な製品であり、発する光が光合成と細胞分裂を促進します。照明システムでユニークなのは、光合成と細胞分裂を促す光だけでなく、植物の成長に必要な他の側面にも働きかける複数の種類の光を提供できることです。

◆今のところ、みらいはレタスなどの葉物野菜の栽培に絞っていますが、トマトやジャガイモ、果物といった他の農産物にもこの仕組みは適用できるのでしょうか?

 少なくとも技術的には、ほとんどどんな種類の植物でも工場で作れると考えています。ですが経済的に最も合理的なのは、成長が早くて迅速に市場に届けられる野菜を作ることなので、それが今の我々にとっては葉物野菜だということです。しかし将来的には、もっといろいろな種類の農産物を作りたいと考えています。

Photograph by Kyodo via AP

文=Gloria Dickie

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