スーダンの古代の墓に埋葬されていた若い男性。ビーズ状の装身具を身に付けている。

Photograph by Donatella Usai / Centro Studi Sudanesi and Sub-Sahariani (CSSeS)
 ハマスゲという植物は、非常に厄介な雑草だ。気づかないうちに地中で広がり、除草剤も、まるで炭酸水を撒いているように効果がない。しかし、このほど発表された研究によると、一部の古代民がこの雑草を歯ブラシ代わりに利用していたかもしれないという。 2000年前にスーダンで暮らしていた人々の遺骨の分析から、彼らがハマスゲを食べていたことが明らかになった。彼らは驚くほど健康な歯を持っていた。それは、ハマスゲの抗菌作用のおかげかもしれないと、論文を発表した研究者は指摘する。

 古代の人類には一般に虫歯があまり見られない。理由の1つは、肉食中心で、炭水化物をそれほど摂らなかったことだ。

 その後人類は農耕を発明し、穀物を多く食べ始めた。口の中で細菌が繁殖し、その細菌が吐き出す酸で歯が蝕まれていく。初期の農耕民は、狩猟採集民よりも虫歯が多い傾向があった。

 ところが、研究論文の共著者でイタリアのスーダンおよびサハラ以南地域研究センター(CSSeS)のドナテッラ・ウサイ(Donatella Usai)氏によると、アルキダイ2(Al Khiday 2)と呼ばれる古代の墓地に約2000年前に埋葬された人々の歯を調べたところ、おそらく彼らは農耕民であったにもかかわらず、穴や膿瘍など、虫歯の徴候が見られる歯が1%にも満たなかったという。

 硬化した歯垢片の分析から、この墓に埋葬された人々はハマスゲの塊茎を摂取していたことが分かった。おそらく食料として、また薬として食べていたと考えられる。遅くとも8700年前にアルキダイで埋葬された人も、農耕開始以前であるにもかかわらず、おそらく食料としてやはりハマスゲの塊茎を食べていた。

 ほかの研究者の実験から、ハマスゲの抽出液が、虫歯に関わる最も一般的な細菌の繁殖を抑えることが分かっている。つまりハマスゲは、滋養のある食事として、また、意図的ではなかったにせよ、原始的抗菌薬として摂られていた可能性があると、研究者らは話す。ただし、そのつながりは証明されていないとの留保付きだ。

 ミズーリ大学セントルイス校の生物学的人類学者サラ・レイシー(Sarah Lacy)氏も、そのような作用は確かにありうると指摘する。レイシー氏は今回の研究に関係していない。レイシー氏によると、特定の植物が古代人の虫歯を抑えていたという報告はこれまでに例がなく、この結果は「非常に刺激的だ」と話す。

 ハマスゲの塊茎には多くの効用があるようだが、味が良いとはとても言えない。この論文の共著者でバルセロナ自治大学カタルーニャ高等研究所のカレン・ハーディ(Karen Hardy)氏は、古代人は塊茎を調理して苦みを抑えようと努力したかもしれないが、単純にまずさを我慢していたかもしれないと話す。

「何らかの治療目的で用いていたとも考えられる。薬の味というのはいつでもひどいものだし、それが当たり前だっただろう」。

 この研究は米オンライン科学誌「PLOS ONE」に7月16日付けで発表された。

Photograph by Donatella Usai / Centro Studi Sudanesi and Sub-Sahariani (CSSeS)

文=Traci Watson