オスメスの進化、緑藻から仕組みを探る

2014.07.10
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ボルボックス・カルテリ(Volvox carteri)の入ったシャーレ。普通のオス(左上)とメス(右上)、遺伝子操作によって性転換されたメス(左下)とオス(右下)が写る。

Photograph by Sa Geng and James Umen
 オスとメスは、一体どのようにして進化したのか。それは生物学における長年の謎であった。 最新の研究により、単純な遺伝子操作をするだけでメスの藻類が精子をつくり、オスが卵をつくることが明らかになった。オスとメスの進化は、想像していたよりもはるかに単純明快だったのかもしれない。

「驚いたことに、単一の遺伝子がオス・メスの違いに影響を与える能力を進化させた」と、論文の筆頭著者でミズーリ州セントルイスにあるワシントン大学ダンフォース植物科学研究所の生物学者、ジェームス・ユメン(James Umen)氏は語る。

 われわれが今日見る生命体のほとんどは、数百万の細胞を持っている。さえずり鳴く小鳥から硬い樫の木まで、その外見にかかわらず、多種多様な細胞と少なくとも2つの性を有している。しかし、生命はこのように複雑な形から始まったわけではない。地球の長い生命の歴史は、そのほとんどが単細胞生物によって形成されていた。比較的最近になってようやく単細胞から多細胞生物に進化したのだ。

 単細胞生物は、通常細胞を2つに分裂して繁殖する。多細胞生物は単純に分裂して子孫を残すことができない。その代わり、大型生物の多くは性交を通じて繁殖を行う。

◆分裂させて征服せよ

 分裂から性交に至る進化の過程を探るため、ユメン氏はボルボックス(和名オオヒゲマワリ)と呼ばれる緑藻に着目した。ボルボックスには、単細胞のものから複雑な多細胞のものまで幅広い種類が存在する。例えば、ボルボックス・カルテリ(V. carteri)は、2000もの細胞が球体の表面に一層にならんだ一群体として生きる。一方、クラミドモナス・レインハルディ(Chlamydomonas reinhardtii)は単細胞性で、4つの細胞から成る単純な群体を持つこともある。

 以前の研究では、クラミドモナスの繁殖に関する遺伝的特質が重点的に調査された。それによって、「+」と「-」の2つの性(接合型)があることが分かっている。繁殖するには、「+」型のクラミドモナスは「-」型のクラミドモナスを見つけ接合しなくてはならない。これら2つの性は、MIDと呼ばれる遺伝子によって制御されていることが既に知られている。MIDが存在すれば「-」型で、無ければ「+」型である。

 一方、V・カルテリの繁殖は多少複雑で、「+」と「-」の代わりに精子をつくるオスと卵をつくるメスがいる。さらに、MID遺伝子の機能的な複写を持っている。ユメン氏は、その遺伝子がV・カルテリのオスとメスの発達に関係しているのではないかと考えるようになった。

 この仮説を立証するため、ユメン氏と同僚らはMIDの複写をメスの染色体に組み入れ、反対にオスの方はその遺伝子を不活性化した。すると、MID遺伝子が活性化されたメスは生殖可能な精子をつくり、遺伝子操作を受けていない普通のメスとの交配に成功した。同じようなことがオスのV・カルテリにも起こり、精子の代わりに卵をつくるようになった。

「これらの現象がたった一つの遺伝子で操作できるとは驚くべき事実だ」と、モンタナ大学の博士研究員でボルボックスの専門家、マシュー・ハロン(Matthew Herron)氏は述べている。

 ユメン氏とヘロン氏は、新しい発見が全生命にわたって性の進化を理解するのに役立つだろうと期待している。

 今回の研究結果は、7月8日付で米オンライン科学誌「PLOS Biology」に掲載された。

Photograph by Sa Geng and James Umen

文=Carrie Arnold

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