グリーゼ581の系外惑星は幻だった

2014.07.04
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
恒星グリーゼ581のフィルター処理写真。中央付近の黒点の影響を、恒星を周回する惑星の証拠と読み間違えた可能性があるという。

PHOTOGRAPH BY ALAN FRIEDMAN
 サイズも温度も地球そっくりで、生命存在の可能性が期待されていた太陽系外惑星グリーゼ581g。2010年の発見当時は大きな話題になった。しかし、今週発表された論文によると、その期待は的外れだったようだ。「グリーゼ581gは存在しない」と、研究責任者でペンシルベニア州ステートカレッジにあるペンシルバニア州立大学のポール・ロバートソン(Paul Robertson)氏は断言する。さらに、2009年に発表された同じ惑星系のグリーゼ581dは“異星人探し”の候補として有力だったが、実は生命存在にあまり適していないという。

◆当初の発見

 両惑星が存在するという証拠は、主星の恒星グリーゼ581の観測結果がベースになっている。薄暗い赤色矮星で、質量は太陽の3分の1程度、太陽系から約22光年の距離にある。

 ほとんどの系外惑星は主星に近すぎて光学観測は不可能なため、間接的な手掛かりが確認手段となる。グリーゼ581gの場合、視線速度法(ドップラー法)が採用された。周回する惑星の重力によって、恒星が規則的なパターンで地球から見て前後に揺らぐ現象を探す方法だ。

 ワシントンD.C.にあるカーネギー研究所のポール・バトラー(Paul Butler)氏と、カリフォルニア大学サンタクルーズ校(UCSC)のスティーブン・フォクト(Steven Vogt)氏がグリーゼ581gの発見を発表した当時も、観測したと考えていたのはその揺らぎだった。

 発見した“惑星”の公転周期(37日間)をもとに、主星からの距離が計算されている。「表面に液体の水を保持するのに、ちょうどよい距離だ」とバトラー氏は語っていた。また、重力の強さから、質量は地球の約3倍と推定された。

◆湧き上がる疑問

 しかし、当時でさえグリーゼ581gの存在を専門家は疑問視していた。ドップラー効果は光のスペクトル変化に現れるが、あまりにも小さかったため、前後にふらつくパターンを見つけるために統計解析を行う必要があった。

 系外惑星の専門家でフロリダ大学(現ペンシルバニア州立大学)のエリック・フォード(Eric Ford)氏をはじめとする批判的な立場の天文学者は、バトラー氏とフォクト氏の分析には説得力がなく、パターンが存在するかどうかも疑わしいと主張。

 しかし、ロバートソン氏のチームは、当時の解析結果は間違いないと反論。「実際の物理的なシグナルがあった。しかし、恒星自体に由来するパターンで、惑星dやgの重力の影響ではない」。

◆黒点の可能性

 ロバートソン氏の主張する“真相”は次のとおりだ。グリーゼ581の表面で起きる磁場の揺らぎ(恒星黒点)によって恒星のスペクトルが変化し、その様子が惑星の重力が引き起こす揺らぎによく似ているのだという。

 グリーゼ581の自転周期は130日で、表面の黒点も同期して回る。問題の2つの惑星の公転周期はそれぞれ130日の2分の1と4分の1とされている。研究チームが黒点の影響でパターンを補正したところ、どちらの惑星も“消滅”してしまった。

 フロリダ大学のフォード氏は今回の研究には関与していないが、「グリーゼ581の揺らぎは、惑星の存在ではなく恒星の活動に起因する事実が極めて明確になった」と支持を表明。バトラー氏はこの件についてコメントを控えており、フォクト氏にもコメントを求めたがメールへの返信はない。

◆ほかの惑星も存在しない?

 さらに、グリーゼ581のほかの3惑星(高温のため生命には適さないとされていたb、c、e)の再検証も進んだ。

「すべて幻だったというのが結論だ」と、共同研究者でペンシルバニア州立大学のスブラス・マハデバン(Suvrath Mahadevan)氏は言う。「残念な結果だが、重要な教訓が得られた。恒星活動はデータに悪影響を及ぼす大きな要因になる。今後は無視できなくなるだろう」。

 ロバートソン氏も同意する。「明確になって良かった。より確実な証拠を基に惑星の存在を解明できるからね」。

 今回の研究成果は「Science」誌オンライン版に7月3日付けで発表された。

PHOTOGRAPH BY ALAN FRIEDMAN

文=Michael D. Lemonick

  • このエントリーをはてなブックマークに追加