チクングニア熱、カリブ諸国で拡大

2014.07.03
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ハイチの首都ポルトー・プランスで、蚊の駆除剤を撒く公衆衛生人口省の職員。今年5月撮影。

Photograph by Hector Retamal. AFP/Getty
 今年6月、マイアミ大学病院にやってきた中年女性は、熱とひどい関節痛を訴え、その歩みもおぼつかなかった。顔中に失神が拡がっており、重症化した紅斑性狼瘡またはリウマチ性関節炎かと思われた。 しかし話をよく聞いてみると、この患者は最近ドミニカ共和国から戻ってきたばかりだという。その事実と症状を照らし合わせて、医師は別の診断にたどり着いた。蚊を媒介として伝染するチクングニア熱である。この蚊は、デング熱を媒介することでも知られている。

 チクングニア熱は、特にアジアやアフリカなど世界の他の地域で数十年にわたって住民たちを苦しめていたが、ここ数年でさらに拡大している。カリブ諸国で初めて感染が認められたのは昨年12月。それから既に、25万人が感染している。

 ウイルスは命に関わるほどではなく、人から人への伝染もない。しかし、その痛みは尋常ではなく、経験した人は「もういいから殺してくれ」とさえ思ったという。非常に珍しいケースではあるが、中にはその苦痛が数カ月から数年続く場合もある。

 カリブ諸国では、蚊の繁殖現場を抑え込むのが難しく、まだ新しい病気のため、政府の公衆衛生当局は、拡大を食い止めることができずにいる。

 マイアミ大学の熱帯医療プログラムディレクターのポーラ・リヒテンバーガー(Paola Lichtenberger)氏は、公式に発表されている数字よりも患者数は多いと見ている。チクングニア熱は診断が難しいためだ。

 アメリカをはじめ世界中の公衆衛生局は、事態を注意深く見守り、感染地域の住民へ対し、予防措置を取り、水のある場所を消毒するよう呼びかけている。アメリカ東海岸の主要10都市で、カリブ諸国への航空便が発着する空港では、チクングニア熱への警告が表示されている。

 これまでに、患者数が最も多く報告されているのがドミニカ共和国で、13万5000人が感染したと見られている。次にグアダルーペ島の4万人、ハイチの3万9000人、マルティニク島の3万5000人と続く。

 リヒテンバーガー氏は、半年前までこの病気を見たこともない医師たちには、正しい診断を下すのは難しすぎると言う。インフルエンザやデング熱と症状が良く似ているためだ。中には、デング熱を併発している場合もあるという。

◆ワクチンも治療薬もなし

 感染すると、多くの患者は5~12日間のひどい関節痛に苦しみ、手で物をつかんだり足に体重をかけるのさえ困難になる。痛みは2週間ほどで治まるが、中には症状が治まった後も「一時的な関節痛に襲われる患者もいる。なぜなのか、原因はまだ分かっていない」と、ノースカロライナ大学チャペルヒル校のマーク・ヘイズ(Mark Heise)氏はいう。

 また、中年以降の患者や、既往症がある患者は、子どもや若い患者よりも症状が重くなる傾向にあるという。ヘイズ氏は、ウイルスがなぜ関節部で複製するのか、なぜ免疫システムが過剰反応するのかを研究している。

 有効なワクチンや、症状の進行を食い止める薬もない。患者は痛み止めを渡され、水分を多く摂取するようにアドバイスされる。

 感染地域へ滞在するようなことがあるなら、長袖を着る、防虫スプレーを使用する、蚊の繁殖場所となる水が近くにないことを確認するなど、いつも通りの蚊対策を取ることが重要だ。

Photograph by Hector Retamal. AFP/Getty

文=Karen Weintraub

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