気候変動がもたらす夏の8つの脅威

2014.07.02
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コロラド州、メサ・ベルデ国立公園のナバホ・キャニオン(Navajo Canyon)の断崖に立つ観光客(1948年)。頻発する洪水と山火事の脅威にさらされている。

PHOTOGRAPH BY WILLARD CULVER / NATIONAL GEOGRAPHIC
 世界の平均気温は、今後数十年で少なくとも摂氏2度上昇すると予想されている。新たな報告書を発表したアメリカの環境保護団体は、今後の夏は悲惨なシーズンになると警告。カやダニなどの害虫や有毒なツタウルシがはびこり、大気汚染や水質の悪化、観光業への打撃が避けられないという。 ニューヨークに拠点を置く天然資源保護協会(NRDC)の上級研究員で、報告書の共同執筆者キム・ノウルトン(Kim Knowlton)氏は、「多くの人が心待ちにする夏だが、多方面の脅威を気候変動が招いていることを心に留めておく必要がある」と話す。

「今や気候変動は、かつてないほど国民の健康に影響を及ぼしている」。ノウルトン氏は、ニューヨークのコロンビア大学メイルマン公衆衛生大学院で臨床学の助教も務めている。

 特に高齢者と子ども、循環器系や呼吸器系の疾患を持つ人は大きな危険にさらされていると、同氏は指摘する。

 ここでは、警戒すべき地球温暖化の影響を8つ紹介しよう。「本気で立ち向かわなければ、事態はさらに深刻になる」とNRDCの報告書は述べている。

◆ 1. 熱波 「夏は年々暑くなっている」とノウルトン氏は話す。NRDCの報告書は、気候変動の影響による熱波の増加、長期化、気温上昇が予想されるとしている。

 記録が残る1880年以降、最高平均気温のトップ10のうち8年が2000年以降に集中しているという。「今年の5月も記録を塗り替えた。来世紀までには、摂氏2.2~6度ほど上昇する可能性がある」。

 さらにNRDCによれば、気候に関連した国内の死亡者では、高温による犠牲者が最も多いという。熱中症など直接的、または心臓疾患や呼吸器疾患の悪化といった間接的な死因が目立つ。

◆ 2. 大気汚染

 NRDCの報告書は、「気候変動の影響で気温が上昇すれば、オゾンなどから成るスモッグが頻繁に発生し、大気汚染の注意報が頻繁になる」と警告。

 呼吸器がより刺激され、国内2700万人のぜんそく患者がさらに苦しむことになる。

◆ 3. 虫の増加

 気候変動は「病気を媒介する虫が蔓延する環境の土台になるかもしれない」と報告書は述べている。

 アメリカ環境保護庁(EPA)によれば、気温上昇はライム病を媒介するダニや西ナイルウイルス、デングウイルスを媒介するカの増殖を促す可能性が高いという。

◆ 4. ツタウルシ

 ノウルトン氏は、「ツタウルシを触ればかぶれるとだれでも知っているはずだが、深刻な症例が毎年絶えない」と語る。

「被害は気候変動とともにさらに増加するだろう。二酸化炭素(CO2)の濃度が高まれば、ツタウルシの成長が早まり、毒性も増すためだ」と報告書は警告している。

◆ 5. アレルギー

 米国内には、季節性アレルギーによるぜんそくやくしゃみに苦しむ患者が3000万~4000万人もいる。報告書によれば、気温とCO2濃度が上昇すれば、雑草の成長が促され、季節性アレルギーの症例も増加する可能性が高いという。

 たとえば、アレルゲンとして悪名高いブタクサの花粉が、北アメリカの一部で1995年より最大1カ月長く飛散していると2011年の論文は報告している。

◆ 6. 食中毒

 アレルギーも心配だが、夏の食中毒も無視できない。食品が媒介するサルモネラ菌やカンピロバクターの繁殖が、高温下では加速度的に上昇する。

 また、東西の沿岸地方で有害な藻類ブルームが増加しており、魚介類の摂取による中毒も発生しやすくなっている。

◆ 7. 海水浴も危険

 藻類ブルームを含む海水は、接触しても口に含んでも悪影響がある。発生場所での海水浴は避けた方が賢明だ。

 さらに、「大雨の直後も泳がない方がいいだろう」とノウルトン氏は言い添えている。地上の汚染物質や細菌が海中に流れ込む傾向があるためだ。

◆ 8. ダメージを受ける国立公園

 報告書によれば、「国を象徴する国立公園や歴史的建造物、遺跡の多くも気候変動によって危険にさらされている」という。「海面上昇や海岸浸食、洪水や豪雨、山火事の増加による、各地の名所旧跡のダメージは明らかだ」。

 NRDCは、広範囲に及ぶ脅威が深刻にならないうちに、温室効果ガス排出の抑制に協力してほしいと国民に呼び掛けている。

PHOTOGRAPH BY WILLARD CULVER / NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Brian Clark Howard

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