獰猛なフィッシャーが生息域拡大、米国

2014.07.02
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過去200年間姿が見られなかった北米のいたるところに、フィッシャーが戻ってきている。

PHOTOGRAPH BY TIM FITZHARRIS. MINDEN PICTURES/CORBIS
 最近発表された調査報告によると、過去200年もの間その姿を見ることができなかったアメリカ北東部で、フィッシャーが生息範囲を拡大させているという。しかも、人間の住むすぐ近くまで迫ってきている。さらに、東部で見つかったフィッシャーの頭蓋骨を調査してみたところ、西部のフィッシャーよりも体が大きくなっていることも分かった。 そもそも、フィッシャーとは一体何者なのか? 先に断っておくが、魚は食べない。フィッシャー(fisher)という名前の由来については、開拓初期にアメリカにやってきた移民がこの動物を見て、その姿がフィチェット、フィッチ、フィッチュー(fitchet、fitch、fitchew)などと呼ばれるヨーロッパケナガイタチ(Mustela putorius)に似ていたことから「フィッシャー」と呼ぶようになったという説がある。

 フィッシャー(Martes pennanti)は、イタチ科に属する尾の長い肉食動物である。その仲間には、アナグマ、カワウソ、ミンクなどがいる。フィッシャーは、カナダとアメリカ北部だけにしか見られない。

 体の大きさや習性は、ペットのフェレットとクズリの中間のようなものだ。

「どちらかといえばクズリに近いだろう」と、マックス・プランク鳥類学研究所の博士研究員スコット・ラポント(Scott LaPoint)氏は述べる。ラポント氏は、6月4日に「Animal Conservation」誌オンライン版で発表されたフィッシャーに関する調査報告書の筆頭著者を務めた。この報告書では、中型のイタチ科動物であるフィッシャーが、数世紀の迫害の後、いかに古巣へ戻ってきたかを詳しく説明している(研究の一部は、ナショナル ジオグラフィック協会/ウェイト助成金プログラムの支援を受けている)。

「毛皮を狙った乱獲や森林伐採で、フィッシャーは事実上アメリカから姿を消していた」と、ラポント氏は話す。しかし今では、アメリカ北部からアパラチア山脈にかけて、「かつてのテリトリーの大部分を取り戻しつつある」という。

 東部では、1900年頃と比較して、その地理的生息範囲を119%拡大させたことが分かっている。6月はじめには、オスのフィッシャーがマンハッタンにあるブロンクスの通りをうろついていたのが目撃された。ニューヨークのネズミやリス、ハトは気をつけた方がよさそうだ。

◆中間捕食者

 フィッシャーは「中間捕食者」と呼ばれる捕食動物だ。つまり、食物連鎖の頂点に君臨する最上位捕食者のすぐ下に控えている。成長したメスは1.8キロほど、オスは5.4キロにもなる。また、オスの体長は1.2メートルにまで達するが、その大部分は尾である。

 獰猛でしなやかなフィッシャーは、他の動物が冬の間雪の下で掘った地下トンネルや抜け道など狭い場所へ獲物を追い込み、その首の後ろにすばやく噛み付いて捕食する。

 フィッシャーが東部へ戻るにつれて、その体には変化が見られるようになった。ラポント氏は全米でフィッシャーのサンプルを研究し、東部に生息するフィッシャーの頭蓋骨が、西部や中西部のそれよりも大きくなっていることを発見した。

 生物学者たちが方向性選択と呼ぶもので、この場合は遺伝子の突然変異が少しだけ頭蓋骨の大きなフィッシャーを生み出したという。これによって、獲物をより効率的に捕らえたり、あるいはより大型の獲物を捕らえることができると思われる。頭蓋骨の大きなフィッシャーが、時間をかけて遺伝子を次世代へ残し続ければ、将来この新しい遺伝子が主流になるだろう。

 生息地拡大の一因となっているのは、その高い適応能力である。人間の住む場所には、フィッシャーの捕食対象となるリスや小鳥などの小動物が人間の与える餌を求めてやって来る。

 多くの人間は気付いていないが、フィッシャーたちは意外とどこにでもいる存在となっており、民家のすぐ裏の林にも潜んでいるかもしれない。

PHOTOGRAPH BY TIM FITZHARRIS. MINDEN PICTURES/CORBIS

文=Jason Bittel

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