シリアの古代都市アパメアの「Google Earth」衛星画像。上は2011年7月19日現在。下は同じ地域を撮影した2012年4月3日現在の画像。1年も経たないうちに、遺跡は盗掘者の掘った穴で埋め尽くされ、内戦による大規模な破壊の状況が見て取れる。

SATELLITE IMAGES COURTESY OF GOOGLE EARTH
 3年前の時点で「イラク・シリアのイスラム国」(ISISの略称で広く知られている)は、シリア政府の転覆を企てる、少人数の過激派からなるスンニ派武装組織だった。しかしここ数週間のうちに、ISISは有力な反政府組織として急速な台頭を見せている。ISISはシリア国内での勢力圏を拡大するとともに、イラク第2の都市、モスルを含むイラク国土の広い範囲を支配下に置いている。ここで重大な疑問が生まれる。ISISはなぜこれほど短期間に勢力を拡大し、武装組織が使用する武器の購入資金を確保したのだろか? 多くの証拠から、ISISはシリア国内の自らが制圧した地域内にある油田から多くの資金を得ていたことが示唆されている。しかし、イラクの情報機関がISISの新たな収入源を発見したと、英「Guardian」紙が英国時間6月15日付の記事で伝えている。この機関は死亡したISIS司令官のアジトを捜索中に160個以上のUSBメモリを発見、ここに反政府組織の資金源に関する詳細な記録が保存されていたという。ISISの主要な金融取引として列挙されていたものの1つに、古美術品の不正取引があった。シリアの1地域だけでも、この組織は盗掘した古美術の闇取引から最大で3600万ドル相当の利益をあげていたという。

 こうした不正な利得行為は、この地域に以前から存在する行動パターンに連なるものだと、モンタナ大学の博士課程に所属するトーマス・リボティ(Thomas Livoti)氏は指摘する。同氏は反政府勢力とそれに対抗する活動が考古学遺跡に与える影響を研究テーマとしている。

◆繰り返される盗掘

「アルカイダやタリバンも、自らの作戦遂行のための資金を捻出する目的で古美術品を盗掘していた」と、リボティ氏は指摘する。そして、アルカイダ系組織であるISISも、同様の資金調達モデルを採用している可能性が高いという。この傾向は、他の資金源からの金の流れが干上がりつつあるなかで顕著になっている。リボティ氏によれば、「アメリカが銀行口座を凍結し、偽の慈善団体への取り締まりを強化している」ため、「ISISは他の資金調達手段に向かわざるを得ない状態」なのだという。

 シリアで内戦が勃発して以来、同国の重要な考古学遺跡の多くが盗掘者の標的になり、換金性があるとみられた古美術品が略奪の被害に遭っている。例えば、シリアのアパメアは、アレクサンドロス大王の部下の将校が建造した古代都市で、1999年にはユネスコ世界遺産の暫定リスト入りも果たした遺跡だが、「Google Earth」の衛星画像からは、内戦発生後の大規模な略奪行為の跡がはっきりと見て取れる。2011年7月20日から2012年4月4日までのわずか9カ月足らずの間に、何の被害も見られなかったアパメアの遺跡は、盗掘者が掘った無数の穴で埋め尽くされるようになった(写真参照)。

 現在、イラクの情報機関では発見されたISISのUSBメモリを分析し、シリアの違法な古美術品取引にスンニ派の過激主義者が果たした役割について、その特定に向けて動いている。しかし、違法な古美術品取引を研究するユニバーティ・カレッジ・ロンドンの考古学者、サム・ハーディ(Sam Hardy)氏によれば、反政府組織や民兵集団がこうした違法取引に入り込む道筋は、大きく言って3つあるという。密売ネットワークの運営、警備の提供による密輸の手助け、あるいは支配地域内で盗掘した古美術品を運ぶ密輸業者を対象とした税金の徴収の3種類だ。

 ハーディ氏は、ISISの場合は密輸業者に税金を課す手口を用いているのではないかとみている。ISISは、「国家としての機能を果たしたいと考えているようなので、その意味では少なくとも課税を行っている必要がある」と、同氏は指摘する。しかし、それだけにとどまらない可能性もある。「ISISが油田の管理や密輸作戦を実施しているとのうわさもある」と、ハーディ氏は付け加えている。

SATELLITE IMAGES COURTESY OF GOOGLE EARTH

文=Heather Pringle