アギトアリ、虎挟みのような顎で跳躍

2014.06.24
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大きな顎を水平に開いたトラップ・ジョー・アント。

Photograph by Alex Wild. Visuals Unlimited/Corbis
 アメリカ南東部で縄張りを広げる外来動物がいる。「トラップ・ジョー・アント(顎を罠として使うアリ)」と呼ばれ、ギザギザの大顎と恐るべき針を持ち、ロケット花火のように宙高く舞いあがる。 ほとんどのトラップ・ジョー・アントは、アギトアリ属に属す。「アギト」は顎を意味し、その180度に開く大顎にちなんで名づけられた。

「彼らは、まるで歩き回るシュモクザメのようです」と語るのは、ノースカロライナ州立大学のD・マグダレナ・ソルガー(D. Magdalena Sorger)氏。同氏は、博士論文の一環としてこの興味深い昆虫を研究している。

◆アリの行進

 米国には、4種のトラップ・ジョー・アントの在来種がいることが知られている。ソルガー氏と共著者らは、南アメリカからやってきた侵襲的で、とりわけ凶暴な外来種、オドントマカス・ハエマトダス(Odontomachus haematodus)と呼ばれるアギトアリの仲間に興味を持った。

 この外来種は、すでに50年前から北米に生息していることが分かっている。新しい研究によると、現在ではメキシコ湾岸沿いの州に移り住み、ごく日常的に見られる。

 この50年で一体何が変わったのだろう。ソルガー氏は、アギトアリの個体数が増えてコロニーが広がっていったか、気候変動が新たな生息地を提供したと考えている。

◆隣人と対面

 巨大な顎を持つアリは、動作が遅いと思われがちだ。しかし、アギトアリの顎を閉じる速さが、動物界では最速であることを研究者らは発見した。

「彼らは、顎の内側に小さな感覚毛を持つ」と、デューク大学で運動の進化的力学を研究している生物学者のシェイラ・パテック(Sheila Patek)氏は説明する。同氏によると、その感覚毛は、顎を開いたままにしておく筋肉と直接つながっている。「そのため、脳が処理するよりも速く、顎を閉じる筋肉を動かすことができる」。

◆ジャンプするアリ

 獲物を顎で捕えて失神させることだけが、このアリの特技ではない。トラップ・ジョー・アントは危険にさらされると、地面に対して顎を閉じ、その強力な反動によってフライパンから飛び出るポップコーンのように空中へ跳ね上がる。

 アリが集団で一斉に飛び上がる様子は、見ていて少し怖くなるとパテック氏は言う。

「ふと気が付くと、このアリが宙を飛んでいて、見ることができません。非常に速く動いているのです。腹部の先端には大きな針がついています。アギトアリの研究には、とても神経を尖らせます」。

◆影響

 外来アリの専門家、アンドリュー・スアレス(Andrew Suarez)氏によると、アルゼンチンアリやヒアリのような外来種と異なり、アギトアリは、在来種を圧倒するような数万から数十万の働きアリを伴うコロニーを持たない。「だからといって、影響が全くないわけではない」とスアレス氏は言う。

 アリのひと刺しはとても痛く、毒にアレルギー反応を起こす人がいる可能性は十分にあると同氏は注意を与えている。

 研究結果は、学術誌「Zootaxa」の5月号に掲載された。

Photograph by Alex Wild. Visuals Unlimited/Corbis

文=Jason Bittel

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