ビーナス・エクスプレス、大気圏に突入

2014.06.20
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金星大気の上層で太陽風の荷電粒子を浴びるビーナス・エクスプレス(想像図)。

ARTWORK COURTESY ESA / AOES MEDIALAB
 金星の周回軌道を飛行中の欧州宇宙機関(ESA)の探査機ビーナス・エクスプレスは5月、厚い二酸化炭素の大気を静かに降下して高度130キロまで到達した。 3週間かけて二酸化硫黄の雲をかき分け、存在の可能性が指摘されている弱い磁場を探索し、低層大気に関する情報を収集する予定だ。また、将来のロボット探査で応用が期待される、大気抵抗を利用して減速し、軌道を制御する「エアロブレーキング」もテストされる。

 すべてが計画通りに運んだ場合は、再び大気層から浮上し、数カ月間データを収集してから、今年の後半には最後のメッセージを地球に発信する予定だ。しかし探査機の状況や残燃料の量によっては、計画が変更を余儀なくされる可能性もある。

 オランダのノールトウェイクで待機するESAのプロジェクト責任者ハカン・スヴェデム(Hakan Svedhem)氏は、「探査機は極めて堅牢で、今回のミッションでも大きなダメージは予想されていない。しかし、リスクは常に存在する」と話す。

 2005年に打ち上げられたビーナス・エクスプレスは、2006年4月に金星を周回する極軌道に投入された。南極では高度6万6000キロ、北極では高度250キロという偏った軌道を飛行しながら、地球に最も近い惑星のデータを休むことなく収集し続けている。

 8年後の現在、観測運用は終了。蓄積された豊富な観測データを基に、かつては地球そっくりの高温の惑星について、新たな疑問が数多く提示されている。 ◆活発に活動する金星

 過去に海が存在した証拠など、ミッション中の発見のいくつかは、地球の姉妹惑星である金星の歴史を理解する上で基礎的なデータとなっている。また、ビーナス・エクスプレスは、古の火山活動の可能性も明らかにした。華々しい火星探査の影に隠れがちだが、地質学的に活発なもう1つの天体として専門家の注目を集めている。

 探査機は、最近形成されたと考えられる表面の様子や、地下のホットスポットの兆候など、金星の火山活動の確かな証拠を提供。大気中の二酸化硫黄も検出し、火山放出の可能性が示唆されている。

 アメリカ、カリフォルニア州パサデナ、NASAジェット推進研究所(JPL)の惑星科学者スザンヌ・スムレッカー(Suzanne Smrekar)氏は、「ビーナス・エクスプレスは、地質学的年代における最近の火山活動の証拠を示した、間違いなく最初のミッションだった。金星は現在も活動している可能性があるが、確かめるには新しいデータが必要だ」と述べる。

 到着後の探査機は、予想外の事実を伝えてきた。大気上層には、わずか数日で金星を一周する強風「スーパーローテーション」が吹いている。ビーナス・エクスプレスは時速400キロと観測。1990年代にNASAの金星探査機マゼランが訪問した時点よりも100キロほど速くなっている。

「これには誰もが驚いた。予測していなかったし、未だに解明されていない」とスヴェデム氏は言う。

 一方、地球時間の約243日間とされる自転周期は遅くなっているようだ。ビーナス・エクスプレスの観測によって、現在の1日の長さはマゼラン訪問時よりも6.5分長くなっている事実が判明。その理由も結論が出ていない。

 探査機が撮影した写真からは、驚異的な現象も明らかになった。形が変化する巨大な渦が南極で発見され、巨大ハリケーンのような渦がヨーロッパほどの大きさで覆っている。直径数キロの目は1つの場合もあれば、複数個に発展する場合もあるという。

 金星の北極にも似たような現象が確認されており、南極と同様、無秩序で巨大な渦が激しく動いている。太陽系で唯一の渦の原因は未解明だが、大気のスーパーローテーションとの関係が推測されている。

ARTWORK COURTESY ESA / AOES MEDIALAB

文=Nadia Drake

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