獲物を捉えたハシリグモ。フランス領ギアナで撮影。

PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT. NATURE PICTURE LIBRARY/CORBIS
 小さな魚の暮らしも楽ではないようだ。水中で天敵に狙われるかと思えば、人間が釣り針で罠にかけようとする。時には空中から敵が襲いかかる。「魚釣りグモ」とも呼ばれる魚を食べるクモは、南極を除くすべての大陸に生息する。特に、フロリダの湿地帯のような温暖で酸欠気味の水場に広く分布する。酸素が豊富な水面近くに集まる魚を狙えるからだ。

 記載済みのクモは既に4万種を超えているが、そのうち少なくとも18種が魚を捕食すると確認された。その中にはアメリカのシックス・スポテッド・フィッシングスパイダー(six-spotted fishing spider、学名Dolomedes triton)、インドのポンド・ウルフ・スパイダー(pond wolf spider、学名Pardosa peudoannulata)、そしてヨーロッパのグレート・ラフト・スパイダー(great raft spider、学名Dolomedes plantarius)が含まれる(学名のDolomedesは、ハシリグモ属を示す)。

 今回の研究はスイス、バーゼル大学のマーチン・ニッフェラー(Martin Nyffeler)氏とオーストラリア、アルバニーにある西オーストラリア大学のブラッドレー・ピュージー(Bradley Pusey)氏によって報告された。2人の生物学者は、魚を食べるクモに関する文献やインターネット上の掲載を調査した。89の記録が見つかり、そのうち半分が未だに科学論文として発表されていなかった。両者はそれらの記録を基に、クモが魚を食べるという異様な行動の全容を把握した。

◆捕食の手順

 魚釣りグモは、池や沼地などの淡水域に生息し、巣を作る代わりに足を使って狩りをする。中には泳いだり、潜ったり、水面を歩くクモもいる。

 半水生のクモは、「後ろ脚を石や植物にしっかりと固定して、前脚は水面に置く」と、著者らは記す。そして獲物が来るのを待ち構える。水面に立つかすかな波や前脚に触れるあらゆる刺激が攻撃の合図となる。

 動くものならほとんど何でも捉えようとする。多くの場合、水中に落ちた昆虫が彼らのエサとなる。だが、時おり魚のような大きな動物を意図的に攻撃する。

 獲物を捉えると、力強い鋏角(きょうかく)を使って神経系を麻痺させる神経毒を体内に注入する。

 そして魚の息が絶えると、死体を乾いた陸地へ運び、簡単に食べられるように体の組織を液化する化学物質を注ぎ込む。

◆大物の捕獲

 動物界では、捕食者の体の大きさは通常、捉えようとする獲物より大きく、平均で42倍ある。だが、魚食性クモモの中には獲物より体が小さいものがいる。

 例えば7グラムある大きいクモが、30グラムの魚を捕まえることができると著者らは推測する。

 このような特大サイズの食べ物は、メスが卵を作る過程で、あるいは昆虫を十分捕獲できない場合とても重要になる。

PHOTOGRAPH BY INGO ARNDT. NATURE PICTURE LIBRARY/CORBIS

文=Katie Langin