W杯マスコット、アルマジロの秘密

2014.06.19
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ミツオビアルマジロ(学名Tolypeutes matacus)。

Photograph by Joel Sartore / National Geographic Creative
 アルマジロは、思わず抱きしめたくなるようなかわいい動物とは言いにくい。そのビーズのような目、うろこ状の皮膚、甲羅のように硬い背中はまるでロブスターに変装したネズミだ。 しかし、身を守るために丸まってボール状になると、たちまち強くなる。2014 FIFAワールドカップのマスコットに、フレコ(Fuleco)というミツオビアルマジロが選ばれたのはこの理由からだ。

 しかし、ワールドカップをテレビなどで観戦する32億人の多くはおそらくアルマジロのことをあまり知らないだろう。この小さな武装した動物について少し紹介しよう。

◆武装した哺乳類

 アルマジロは20の種から成り、そのほとんどが南アメリカに生息している。ナマケモノやアリクイとともに異節上目に属する。

 哺乳類で身を守るための甲羅を持つのはアルマジロしかいない。ミツオビアルマジロ属の2種だけが、球体に近い形に丸くなることができる。

◆“クローン”づくりの名人

 人間は1つの胚から2人以上の子供を産むことがある。こうして生まれた子供は双子、三つ子などと呼ばれる。しかし、アルマジロにとっては双子や三つ子など大したものではない。

 アメリカ、ジョージア州にあるバルドスタ州立大学(Valdosta State University)の生物学者としてアルマジロの研究を行うジェイムズ・ローリー(James Loughry)氏は、「私が研究しているココノオビアルマジロは四つ子を産む」と話す。「さらに、アルゼンチンには一卵性の子供を最大12匹産む種もいる」。

 しかも、この現象は例外なく起きる。四つ子であれ、12匹であれ、ほかの数字であれ、子供たちは遺伝的に同一な上、性別も同じだ。つまり、一緒に生まれる子供はすべて雌かすべて雄で、科学的には“クローン”と呼ぶことができる。

◆ハンセン病の遺産

 人間とアルマジロには不幸な共通点がある。ハンセン病に自然感染するたった2つの生物なのだ。

 ハンセン病はらい菌によって引き起こされる。この厄介な細菌は少しだけ低い温度を好む。人間の場合、温度の高い臓器には症状が現れないため、病状が進行してしまうことが多い。不運なことに、アルマジロの内臓の温度はほとんどの哺乳類より低い。つまり、らい菌が体腔で自由に暴れ回り、臓器不全から死に至るということだ。

◆個体数の減少

 ブラジルでは、アルマジロは決して繁栄していない。ミツオビアルマジロは国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで絶滅保護II類に指定されている。主な要因は生息地の破壊だ。

 ローリー氏はIUCNの専門家グループの一員としてアルマジロとナマケモノ、アリクイを扱っている。そのローリー氏によれば、ワールドカップは自然保護論者にも注目されているという。ただし、サッカーを通じて国同士が戦うことに注目しているわけではない。

「FIFA(国際サッカー連盟)はワールドカップのマスコットにアルマジロを選んだが、ブラジルに生息するアルマジロの保護に金を使うつもりはないようだ」とローリー氏は指摘する。

 多くの科学者がFIFAに対し、ワールドカップでゴールが決まるたびに一定の金額をアルマジロの生息地の保護のために提供するよう求めている。

 ブラジル、ペルナンブコ連邦大学(Federal University of Pernambuco)の生物学者エンリコ・ベルナルド(Enrico Bernard)氏は声明の中で、「それこそが最高のゴールだ」と訴えている。

Photograph by Joel Sartore / National Geographic Creative

文=Jason Bittel

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