チリ、パタゴニアのダム計画を白紙に

2014.06.18
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パタゴニアのベーカー川。 Photograph by Nigel Hicks / National Geographic Creative

 チリ政府は6月10日、パタゴニアを流れる自然豊かな2つの川に5つのダムを建設する計画を白紙に戻すことを決定、8年に及ぶ環境団体と開発業者の対立に終止符を打った。 チリの閣僚委員会が撤回した環境許可は、ベーカー川とパスクア川に水力発電ダムを建設するというハイドロアイセン計画である。もしダムが建設されれば、5900ヘクタールの土地が水没することになっていた。

 2011年に委員会は許可を承認していたのだが、国内外の環境保護団体からの強い反対にあっていた。

 天然資源保護協議会(Natural Resources Defense Council)のラテンアメリカ・プロジェクト・ディレクターを務めるアマンダ・マックスウェル(Amanda Maxwell)氏は声明を出し、「パタゴニアの、逞しく多様性に富んだ原生自然はまさに環境の宝だ。巨大ダムの建設は、この卓越した地域の野生生物や伝統文化、地元の環境産業を危険にさらしてしまっただろう」と語った。

 ダムが建設されれば、2750メガワットの発電能力を有し、チリのエネルギー消費量の15~20%を供給する計画だった。

 近年、チリでは経済成長によりエネルギーの供給不足が続いている。石油資源に乏しく、頼りにしていたアルゼンチンからの輸入は、アルゼンチン国内での需要も高まったことで減少し、ボリビアからの輸入は、同国との国境問題で落ち込んでいた。

代替エネルギー?

 ダム建設がキャンセルされたことにより、別の発電法を模索しなければならなくなったチリ政府は、外国から液体天然ガスを輸入するターミナルを増設し、省エネ政策に大幅な投資を行う考えだ。政府は、2025年までに到達すると見られていたエネルギー消費量の20%を削減するよう目標を設定した。

 さらに、2025年までに国内の発電量の20%を再生可能なエネルギーに移行するという目標を立てた(現在は約6%)。公共建造物の屋根に太陽光パネルを設置したり、アタカマ砂漠へも太陽光パネルの設置拡大を検討している。 別の可能性としては、国内に数多く存在する活火山付近での地熱発電所の建設や、チリの長い海岸線を利用した、波や潮汐による発電の実験プロジェクトなどがある。

 一方、敗北したダム建設を計画していたハイドロエレクトリック・アイセン社(Hydroelectric Aysen S.A.)は、成長を続けるチリ経済へエネルギーを供給するためにも計画は必要だったと主張する。この計画は、「最高の環境基準」を取り入れ、「工事の行われる地域の自然環境や、社会・文化環境への影響をできるだけ抑えるよう」デザインされていたと、同社の公式Webサイトに書かれている。

 サンチアゴにあるカトリック大学のエネルギー専門家ヒュー・ラドニック(Hugh Rudnick)氏も、ダム計画は効率的だったとBBCに対して語っている。ラドニック氏によれば、「予定されていた水力発電量に対して水没する土地はとても狭い範囲だった」という。

文=Brian Clark Howard

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