世界最古のマスク、農夫の祖先の顔か

2014.06.13
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イスラエルのジュディアンヒルズ、もしくはその南部の丘陵地帯で発見されたこれらのマスクは、展示品の大部分と同様、頭蓋骨のような特徴を示している。

PHOTOGRAPH BY ELIE POSNER, COLLECTION OF JUDY AND MICHAEL STEINHARDT, NEW YORK c THE ISRAEL MUSEUM, JERUSALEM
 世界最古のマスク12点がエルサレムにあるイスラエル博物館に展覧会のために初めて集められた。これらの珍しい石製の芸術品は、狩猟採集生活をやめ、現在のエルサレムのあるジュディアンヒルズやその近郊のジュディアン沙漠の外れに定住するようになった初期の農民の子孫が作ったものだ。 生活様式が大きく変化し、組織化された宗教が誕生したことで、農民はそれまで信じて来た宗教の儀式で使うために、飾り気のない石の彫像を作るようになったのかもしれない。

 イスラエル博物館先史文化部門の専門職員、デビー?ハーシュマン(Debby Hershman)氏は過去10年間に渡り、新石器時代の石製マスクに関する初めての包括的な研究を行なって来た。研究の対象となったのは、今回展示されている12個のマスクとその他3個を合わせた15個だ。同氏は、「マスクの多くは亡くなった人をかたどったものに見える。重要な祖先など、特定の人物の肖像だろう」と述べている。

 特定の土地に根を下ろしたばかりで生き延びるために耕作した土地を守らなければならなかった人々にとって、先祖の彫像は大きな心の拠り所だったのかもしれない。

「農民達は文字を持っていなかったので、土地への繋がりを示すものは、祖先からそれを受け継いだという事実だけだった。祖父も曾祖父もそこに住んでいたのだから、この土地は自分のものなのだと考えたのだ」とハーシュマン氏は説明する。

 これらのマスクのうち、考古学者が発掘したものはほとんどないため、マスクがどのように使われたのかは明らかでない。ハーシュマン氏は、マスクには土地の所有を表す以外の役割 もあったのではないかと考えている。祖先信仰の儀式において感情を盛り上げる道具として身につけられるなど、神秘的な側面もあったようだ。

 1983年、同氏はハーバード大学の先史研究者オフェル?バール=ヨーセフ(Ofer Bar-Yosef)氏の率いる小さなチームに加わり、最近盗掘された南ジュディアン沙漠の洞窟を発掘した。ナハル?ヘマルの名で知られるこの洞窟は、祖先信仰に使う何千個もの物品を保管するために使われていたと見られる。縄で編んだ籠や木製ビーズ、貝、フリント石のナイフ、骨を削って作った立像、 型に流し込んだアスファルトで装飾したヒトの頭蓋骨、儀式の衣装として使われたと思われる刺繍を施した布などが出土した。

◆マスクはどのように使われたか

 マスクが着用されていたかどうかを知るため、 エルサレムのヘブライ大学のレオーレ?グロスマン(Leore Grosman)氏率いる研究チームは、マスクをスキャンし、コンピューターシミュレーションによる3次元モデルを作成した。マスクはそれぞれ寸法や特徴が異なるが、実物大にすると人間の体の比率と合致し、生きている人間の顔の輪郭を有している。

 ハーシュマン氏によると、マスクに開いた目の穴から、マスクは着用する目的で作られていたことが明らかだという。多くのマスクには側面に穴が開いており、紐などを穴に通し、マスクをつけて儀式に参加する人の頭の後ろで結んだと思われる。

 また、スキャン画像から、マスクのいくつかは頬骨やこめかみが突き出し、目の窪みがはっきりとしていて頭蓋骨のようであることや、歯は恐怖から剥き出したように見えることがわかった。老人の頭蓋骨を象ったとみられるマスクもあった。

 世界の人々にマスクを見てもらおうと、イスラエル博物館は近々、展覧会カタログの英語版を出版予定だ。

PHOTOGRAPH BY ELIE POSNER, COLLECTION OF JUDY AND MICHAEL STEINHARDT, NEW YORK c THE ISRAEL MUSEUM, JERUSALEM

文=A. R. Williams

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