クモの「交尾栓」、その効果は?

2014.06.12
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コブアカムネグモ属の1種Oedothorax retususのメスの成虫。

PHOTOGRAPH BY NIGEL CATTLIN/ALAMY
 交尾後のメスに、ほかのオスの精子の侵入を妨害する「交尾栓」を挿入するオスのクモ。その有効性が確認された。 生殖は生命の原動力だ。種によっては、自分の遺伝物質を子孫に残すために、ほかの種にはない手段を講じるものがある。

 例えば、ある小型のクモのオスは、自分が確実に父親になるよう、交尾後のメスに、ほかのオスの精子の侵入を妨害する「交尾栓」を挿入するという特殊な方法を取る。

 研究者たちは、クモの仲間のこうした「貞操帯」が、実際にどのように機能しているかを明らかにしてきた。例えば、このほど発表された研究によると、交尾栓の有効性は、その大きさと挿入後の時間により変化するという。

 この研究論文の共著者の1人で、ドイツのグライフスバルト大学動物学研究所・博物館のカトリン・クンツ(Katrin Kunz)氏に、この小型クモの交尾について詳しい話を聞いた。

◆どんなクモか?

 コブアカムネグモ属の1種であるこのクモ(学名:Oedothorax retusus)は、ヨーロッパではよく見られるクモで、体長は3ミリに満たない。塩性湿地や川岸など湿った環境中に生息する。

◆交尾の方法は?

 このクモは、求愛行動から交尾に至る過程で、一連の複雑な行動を取る。

 「求愛には一連の行動が含まれる。オスは最初、メスを確認する際に、腹部を振るわせる。次に、前脚を振るわせながらメスに近づく」と、クンツ氏は電子メールで説明してくれた。

 その後、このクモは、互いに逆向きに向き合って交尾をする。オスが、交尾器である触肢をメスの2つの交尾管に挿入するのだ。

 ことが終わると、オスはメスの交尾管の開口部に、交尾栓を分泌する。

◆交尾栓とは?

 交尾栓は、液体状でメスの中に分泌される。それがしだいに固まり、ほかのオスの精子がメスに侵入するのを防ぐ。

 交尾栓の厳密な化学組成はまだ不明だが、クンツ氏らは、この栓の材料を作る腺を発見した。

 動物の世界では、1匹のメスが多くのオスと交尾する一雌多雄は珍しくない。そのため、多くの種のオスは、ほかのオスの精子と競争するために、創造的な手段を発達させていると、クンツ氏は指摘する。たとえば「競争相手の精子を取り除いたり、よそに移したり、自分の精子に置き換えたりする」。

 「このクモのメスは、何匹かのオスと交尾をし、それらの精子を生殖管の中に貯蔵しておくことが多い。つまり、オスは精子競争にさらされる危険性が高い。オスは、自分の子供を確実に産ませるため、交尾を妨害する交尾栓を作るのだ」とクンツ氏は話す。

 しかも、同じオスが1匹のメスと2度交尾をして、両方の交尾管に栓を詰めると、そのメスを独占できる可能性が非常に高まる。

◆最も有効な交尾栓は?

 クンツ氏らは過去の研究で、交尾栓があると、後から来たオスがそのメスと交尾を成功させる率が有意に下がることを確認している。

 今回の研究の中心的な成果は、交尾栓の状態により有効性に差があることを示したことだ。

 この研究のため、クンツ氏らは「再交尾」実験を準備した。大きさや古さの異なる交尾栓を持つメスに、再度交尾をさせたのだ。古さというのは、栓が挿入されてからの時間を指す。

 その結果、大きく、古い栓ほど、競争相手の精子の侵入を効果的に阻止することが明らかになった。つまり、栓の大きさと硬さが有効性を決定する要素であると考えられる。

 この研究論文は、科学誌「Behavioral Ecology and Sociobiology」のオンライン版に6月10日付で掲載された。

PHOTOGRAPH BY NIGEL CATTLIN/ALAMY

文=Stefan Sirucek

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