ボノボの性質が人間の進化の謎を解明?

2014.06.12
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Image captured from video by NGC
 他人への気配りが上手なボノボは、我々人間の持ついかにも人間らしい利他的な性質の謎の解明に取り組む研究者の手伝いをしてくれている。 人間はいかにして他人に対する思いやりの心を抱くようになったのか、といった疑問に光を当ててくれることとなったボノボだが、研究に協力してくれたボノボは、母親をその人間に殺された孤児たちであるという事実は何と残酷な皮肉だろうか。

 ノースカロライナ州ダラムにあるデューク大学の進化人類学者ブライアン・ヘア(Brian Hare)氏とジンジ・タン(Jingzhi Tan)氏の研究対象となっているのは、中央アフリカで違法密猟者に母親を殺されたボノボの孤児たちだ。

 コンゴ民主共和国(DRC)キンシャサのロラ・ヤ・ボノボ保護区で保護された類人猿を研究するヘア氏とタン氏は、これまで人間特有のものと思われていた社会的な行動がボノボにも見られることを明らかにした。

 他の類人猿(人間に最も近いチンパンジーも含めて)と違い、平和的なボノボは会った事のないボノボをも受け入れ、自分の持っているものを、相手を問わずどのボノボとも共有し、さらには「伝染性のあくび」と呼ばれる感情の共有を示すことさえある。

 これらの研究結果は、なぜ人間は自分の直接の家族やグループの枠を超えて他人を助けたり、優しい態度を見せるのかという長年の進化的謎を解明する手がかりになるかもしれない。そこには、生物学上の根拠がありそうだ。

「人間が利他的な性質を形成するのには、文化や教育が重要な役割を果たしてきたのは確かだ。しかし、ボノボの研究結果から言えることは、人間の最も究極的な形での寛容さや利他的な行動は、遺伝子によって引き起こされている部分もあるということだ」と、タン氏は説明する。

◆公平に分け合う

 研究チームは、そうした性質について調べるため、保護区のボノボを使って様々な実験を行った。

 2013年に発表された研究では、14頭のボノボを1頭ずつ、食べ物の置かれたケージに入れ、その両側に食べ物の入っていないケージを置いた。そのうち一方のケージには、顔見知りのボノボが1頭、もう一方には会った事のないボノボが1頭入っている。

 食べ物を持っているボノボは、それを自分だけで食べてしまうこともできるが、隣のケージのドアを開けて、中のボノボを招き入れることもできる。

 14頭のうち9頭までもが、まず最初に見知らぬボノボの方に分け与える選択をした。

 別の実験でヘア氏とタン氏は、他人のあくびが伝染するという、これも人間以外ではボノボにしか見られない特性があることを発見した。物を分け合う習性と同様、伝染性のあくびも、ボノボが他人と共感できることを示していると考えられる。

◆食用として取引されるボノボ

 人間活動の影響で、本来の生息地であるコンゴ盆地に残っているボノボの個体数は2万頭に満たないと見られており、その数は年々減少し続けている。国際自然保護連合は、ボノボを絶滅危惧種に指定している。

 その生存を急速に脅かしているのは、アジア、特に中国における類人猿の違法取引だ。

 ヘア氏によると、中国ではボノボ1頭が5万~30万ドルで、動物園やサーカス、個人へ売られているという。

 DRCの中央部を拠点として活動し、ルクル野生生物研究財団でTL2プロジェクトを担当するテレーズ・ハート(Terese Hart)氏は、アジアからの需要もさることながら、地元の食肉市場も大きな脅威だと語っている。

「ボノボの死体は50ドルで売られており、大家族を数日間は養うことができる」という。

◆ボノボを知る

 それでも、ヘア氏とタン氏は、中国などでボノボの行動研究を周知させることで、この思いやりのあり、分かち合いの精神を持つ類人猿の認知度を高められると期待している。

「その種に関する科学的発見を知り、どれだけ素晴らしい生物であるかを社会が知ることで、保護活動が成果を挙げ始める事例というのはたくさんある」とタン氏は言う。

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文=James Owen

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