動物界最高音で鳴く新種のキリギリス

2014.06.10
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スペルソヌス・エクオレウス(Supersonus aequoreus)のオス。

Photograph by Natasha Mhatre
 キリギリスのオスは、翅を擦り合わせて高周波の音を出し、遠くにいるメスに求愛することで有名だ。しかし、新たに発見されたスペルソヌス(Supersonus)属と名付けられた3種のキリギリスの求愛の音は格別だ。スペルソヌスは動物の世界で最も高音の求愛の音を奏でることがわかった。 ドラムのように振動しスピーカーの役割を果たす右翅の構造により、スペルソヌスは150キロヘルツ(kHz)の高音を出すことができる。ほとんどのキリギリスの求愛の音は5~30キロヘルツだ。ヒトが出せる声の高さはせいぜい20キロヘルツである。

 コロンビアとエクアドルの熱帯雨林の木で発見されたこの新種のキリギリスの翅は他のキリギリスと比べてずっと小さく、長さは1ミリにも満たない。家電がそうであるように、スピーカーは小さければ小さい程、周波数が高くなる。

 今回の研究を率いたイギリス、リンカーン大学のバイオメカニクス(生体力学)専門家フェルナンド・モンテアレグレ・サパタ(Fernand Montealegre-Z)氏は、スペルソヌスの歌を高速オーディオで録音し、それから人間にも聞き取れるように速度を緩めることで、キリギリスの歌の周波数がこれまで知られていたよりも高いことを発見した。

 モンテアレグレ・サパタ氏によると、スペルソヌスの歌は「卓球の玉が弾んでいる音」に似ているそうだ。 コウモリにも見つからない

 キリギリスの高音の呼び声は、交配相手のメスを引きつけるだけでなく、他の動物の餌食になることを避けるのにも役立つという。

 スペルソヌスの翅は飛ぶには小さ過ぎるが、ほとんどの動物には聞きとれない高音で歌うことで、コウモリなどの捕食者に聞かれずにこっそりとコミュニケーションを取ることができる。

 論文によると、コウモリは150キロヘルツの音を聞くことができるが、高周波は遠くまで届かないため、スペルソヌスの声がコウモリに聞かれる可能性は低い。

 今回の研究には参加していないが、ハーバード大学の生物学者、ナオミ・ピアース(Naomi Pierce)氏も、スペルソヌスはこうした独自のチャンネルを使うことで捕食者を回避しているのだろうと述べている。

「動物が秘密のチャンネルを使ってコミュニケーションを取り、パートナーを見つけていることが、測定ツールの発達によって明らかになって来ている」と同氏は言う。

 モンテアレグレ・サパタ氏は、スペルソヌスの特殊な能力は人間の技術開発に役立つのではないかと述べている。研究チームはスペルソヌスの翅に注目することで、画期的なミニチュアオーディオ技術が生まれるかもしれないと期待している。また、超音波を聞き分けるスペルソヌスの繊細な耳は、より敏感なマイクロフォン開発の手がかりとなるかもしれない。

 研究結果は「PLOS ONE」誌に6月5日付で発表された。

Photograph by Natasha Mhatre

文=Christine Dell'Amore

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