温暖化を抑えている公海、急がれる保護

2014.06.06
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インド太平洋を泳ぐグルクマ(Rastrelliger kanagurta、サバ科)。

Photograph by Hans Leijnse. Foto Natura/Minden Pictures/Cobris
 公海の機能を世界海洋委員会が総合的に調べたところ、結果は驚くべきものとなった。 公海は大気中から炭素を取り込んでおり、その働きは数十億ドル分に相当する上、商業的価値のある漁場としても不可欠であることが、世界海洋委員会による調査で明らかになった。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による最新の報告で、公海(海に面する国の基線から200カイリを超える海域)が「さらなる調査を急ぐ必要がある海域」と位置付けられたのに続く発表だ。

 報告書では、公海での漁業停止により、マグロ、サメ、イカなど世界中で乱獲されている資源の回復に役立つだろうとの提案も出されている。

◆無償ではない公海の働き

 公海は数十億ドル規模にもなる世界の水産業を支えているだけではない。地球全体にわたって気候変動の効果を和らげる、一種のバッファーとしても機能している。

 報告書の共著者の1人で、イギリス、オックスフォード大学サマービルカレッジの海洋生物学者アレックス・ロジャース(Alex Rogers)氏と同僚の研究者たちは、公海が年間5億5000万トン(5億メートルトン)もの炭素を吸収していることを突き止めた。ロジャース氏は「莫大な量だ」と評価しながらも、「海中生物の力によるものだ」と強調した。表層から深海までの動植物が炭素を吸って大気中から取り除くため、気候変動の影響が緩和されているという。

◆求められる対応

 報告書の著者らは、人間が公海の酷使を続けるなら、公海は漁業の維持や炭素の除去を続けられなくなるだろうと警告する。ロジャース氏は乱獲で公海の資源が枯渇すると指摘している。例えば海底に沿って網を引く底引き網漁は、深海のサンゴ礁や海山といった繊細な生態系を壊してしまう。

「加えて、毒素による汚染も広がっている」とロジャース氏は付け加える。家庭用製品に使われている物質か工業生産の廃水として出される物質かを問わず、化学物質は最終的に海にたどり着く。その結果、マグロやサメといった海中の最上位捕食者の体内に水銀が蓄積される。

◆対策は可能

 一方、良い知らせもあるとロジャース氏は話す。乱獲など、懸念事項のいくつかは今すぐ対策が可能だ。漁船を追跡・監視する技術はあるが、全ての船に対して可能なわけではない。こうした船に監視装置を取り付け、「なすべきことを確実に行わせる」のは、かなり実現可能性が高いだろうという。

 またロジャース氏は、今では衛星技術も複数の海域を非常に細かいところまで監視できるレベルまで向上していると付け加える。

 明快な解決策として、全ての漁船に国際海事機関(IMO)の番号を付けさせるというものがある。一種の登録番号だ。「大きな船は例外なくIMOの公式な番号を表示しなければならない」とロジャース氏は説明する。「いくつかの理由で、漁船は番号を取得する義務を免除されている」が、IMO番号の取得を義務付ければ、違法行為をしている船を世界中の漁船の中から見つけ出す能力が向上するだろうとロジャース氏は見込んでいる。

Photograph by Hans Leijnse. Foto Natura/Minden Pictures/Cobris

文=Jane J. Lee

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