火星の火山に生命に適した湖の形跡

2014.06.02
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火星にある巨大な楯状火山、アルシア山。山頂には、火山活動によってできたカルデラと呼ばれる大きな窪地が見える。

PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA
 火星探査車キュリオシティとオポチュニティがこの1年でもたらした一連の発見を受け、惑星科学者たちは30億年以上前に大量の水が火星表面に存在したとの確信をかつてないほど強めている。そして水があった場所には、生命が存在したかもしれないと。 しかし、科学誌「Icarus」6月15日号に発表された最新の研究によると、火星にはわずか2億1000万年前まで液体の水が存在し、かつてアルシア山と呼ばれる火山の側面にあった氷河内部で湖を形成していたという。

 このような湖の「可能性は以前から指摘されてきたが、詳細に調べた研究は今回が初めてだ」と話すのは、論文の筆頭著者であるブラウン大学の大学院生キャスリーン・スキャンロン(Kathleen Scanlon)氏。

 アルシア山は標高がエベレストの2倍近くもあり、火星で3番目に高い山として知られる。研究開始当初、スキャンロン氏は湖を探していたわけではなく、アルシア山の側面に見られる扇状の堆積物の特性を調べていた。

 火星探査機マーズ・リコナイサンス・オービタがとらえた画像を分析していたスキャンロン氏は、堆積物の上に奇妙な盛り土のようなものがあることに気が付く。「薄くて平坦なパンケーキのように見えた」と同氏は説明する。「斜面は急勾配で、高さ約150~200メートル程度と思われる」。

◆湖と溶岩

 何がアルシア山の風変わりな地形を作り出したのかはわからなかったが、山の斜面が氷河で覆われていた時期、アルシア山が火山活動中であったことは知っていた。そこでスキャンロン氏は、「地球上の火山と氷の相互作用に関する論文を読んだ」という。

 氷河の下で噴火が起こると、地球でもパンケーキ状の地形が形成されることがある。高温の噴出物質によって必然的に氷は解けるが、氷河が十分に厚ければ最上部は凍ったままの状態を保つ。この氷の下に溶岩が広がることで水に囲まれた薄い層が形成され、氷河内に湖ができるのだ。

 スキャンロン氏の計算では、火星の氷河内にあった湖のうち一つはタホ湖の約3倍、もう一つはその半分程度の大きさだったという。どちらも数百年から約8000年の間に再凍結したと見られている。

◆水は生命に直結しない

 有機分子から生命が生まれるためには数百年、あるいは数千年あっても足りなかったに違いない。しかしスキャンロン氏は、かつて湖に生命体が存在したとしても、そこで発生したものとは限らないと指摘する。

 火星探査車が調査対象とする時期は、火星全体が現在よりもはるかに気温、湿度ともに高かった。その時期に生命が誕生し、惑星が干上がり始めた30億年前頃に微生物が地表の下に逃れた可能性がある。また、その微生物が氷河内の湖にコロニーを形成したとも考えられるのだ。

 しかし、水だけでそのような現象は起こらない。モンタナ州立大学の宇宙生物学者ジョン・プリスク(John Priscu)氏は、「代謝には炭素やエネルギーも必要だが、どこから得られるだろうか?」と問う。

 とはいえ、火星がほぼ乾ききった何十億年も後に液体の水があったという発見には、数十年前は誰も想像しなかったような場所に生命維持物質が存在する可能性を再認識させられる。地球外生命の探索が続く中、今回の研究成果が良い知らせであることは間違いない。

PHOTOGRAPH BY NASA/JPL/UNIVERSITY OF ARIZONA

文=Michael D. Lemonick

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