人間の影響で絶滅速度が1000倍に?

2014.05.30
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ベトナム、クックフーン国立公園にある絶滅危惧霊長類保護センターのゴールデンヘデッドラングール(学名:Trachypithecus poliocephalus)。絶滅危惧IA類(絶滅寸前)に指定されている霊長類だ。主に生息環境の破壊や気候変動により、地球上の種数は急速に減少している。

PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE / WWW.JOELSARTORE.COM
 2010年5月19日、イラク、バグダッドの北にあるバラド統合基地で、ある人が米軍人ジョナサン・トラウアントレンド(Jonathan Trouern-Trend)氏の所へペットボトルに入れたカエルを持ってきた。その色鮮やかなカエルが潜伏していたのは、思いも寄らぬ場所、トイレだった。 トラウアントレンド氏は、「生き物の名前をよく知っている男」として基地では有名だったという。自然愛好家として人生を歩んできた彼は、そのとき軍曹として、イラクで2度目の軍務にあたっていた。

 トラウアントレンド氏はそのカエルを近くの池に放す前に、写真を撮ってiNaturalistというモバイルアプリにアップロードした。このアプリは、動植物の目撃情報をオンラインで報告する世界中の人たちをつなぐものだ。

 アプリユーザーから彼に情報提供があった。彼が見つけたのはレモンイエローアマガエル(学名:Hyla savignyi)で、クルディスタン地域の外ではこれまで記録がないという。この種の分布域に関する知識は、彼の報告によって突然広がっていたのだ。

 このような市民参加型の科学は、近年スマートフォンの普及によって爆発的に広がっている。最近出版された地球上の生物多様性に関する研究の総説によれば、新しい技術によって絶滅速度を緩めることが可能で、自然保護活動家の希望になっているという。

 研究リーダーで米デューク大学の保全生態学者であるスチュアート・ピム(Stuart Pimm)氏と共同研究者たちは、絶滅データに関する初の大規模な総説を出すために、様々なデータソース、特に国際自然保護連合(IUCN)の「絶滅のおそれのある生物種のレッドリスト」を解析した。

 モバイルアプリ、地理情報システム(GIS)の衛星データ、オンラインクラウドソーシングなどは、いくらか種の絶滅問題に対するの対応策となるかもしれないとピム氏は言う。これらの技術を使い、「我々は世界中の何百万もの人を動員している。種の分布について、これまで知られていたよりずっと多くの知識を得るすぐ目の前まで来ているのだ」。今や「種がどこに分布しているか分かり、どこが危険な状態かが分かる。そして状況が非常に厳しいものであったとしても、よりうまく管理することができる」ので、これは決定的な意味を持つものだと彼は説明する。

◆世界には何種いるのか

 絶滅速度を計算することは難しい。その理由の一つは、存在する種の数を正確に知ることができないことにある。科学者がこれまでに特定した動物種は少なくとも190万種にのぼり、おそらくまだ名前が付けられていないものも何百万種もいるだろうと考えられている。加えて、今回の研究によると、少なくとも45万種の植物種が存在するようだ。

 ピム氏の話では、毎年何種が絶滅しているかを追跡することによって、保全研究者は既知種の絶滅速度を計算することができるという。

 この方法により、年間100万種あたり100~1000種が失われていることが明らかになった。主な原因は、人間が引き起こす生息環境の破壊や気候変動だ。

 現生人類が進化する前、約20万年前の絶滅速度を計算するため、ピム氏らは化石記録から得られるデータを再検討し、いつ種が消えるのかに注目した。化石記録がない部分は、統計モデリングを利用して穴埋めした。この解析によって、人類が進化する以前には、年間100万種あたり絶滅する種は1種以下だったことが明らかになった。

 研究の著者らは、今の傾向が続けば絶滅速度は上昇する一方ではないかと考えている。そうなれば、科学者が言う「地球の歴史上6番目の大量絶滅」となるおそれもある。

 この研究にはもう一つ無視できない結論があると話すのは、イェール大学の林学環境学スクールのスクール長ピーター・クレーン(Peter Crane)氏だ。「大きな知識の隔たりが残されている。少なくとも地球上の生物の中でも多様性の高い分類群に対しては、種数がどれだけいて、どこに生息していて、その個体数はどのように変化しているのかを解明する差し迫った必要がある。このことが大きな障害になっている」。

PHOTOGRAPH BY JOEL SARTORE / WWW.JOELSARTORE.COM

文=Christine Dell'Amore

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