鳥の糞に擬態するギンナガゴミグモ

2014.05.30
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巣の上の若いギンナガゴミグモ(上)。同じ調査区域内にあった本物の鳥の糞(下)にそっくりだ。

Photographs by Min-Hui Liu
 これほど情けない擬態もないのではないか。ゴミグモ属の一種であるギンナガゴミグモ(学名:Cyclosa ginnaga)が自らを鳥の糞のように見せかけることで捕食者から身を隠すという、新たな研究結果が発表された。 研究リーダーを務めたのは台湾の国立中興大学の昆虫学者、卓逸民(I.-Min Tso)氏。卓氏は、台湾中部にある調査基地内を散策しているときに、初めてこのことを発見した。

 卓氏は、まるでジャクソン・ポロック(Jackson Pollock)のドリップ・ペインティングのように、白い鳥の糞が点々と落ちているのに気づいた。色鮮やかな緑を背景に、白い糞がくっきりと際立って見えたという。しかし、近づいてよく見てみると、白い斑点のすべてが鳥の糞というわけではないことがわかった。巣の上に乗ったクモがいくつか混じっていたのだ。

 それは、台湾、中国、日本、韓国に生息するギンナガゴミグモ(Cyclosa ginnaga)だった。

 ゴミグモ属のクモは精巧な巣を作ることで知られる、いわば“クモ界の建築家”だ。自らの糸を使って土星の環のような同心円状の網を張り、そこに小枝や木の葉などのごみをくっつけ、子グモが捕食者の目にとまらないようにする。

 今回、卓氏らのチームは、ゴミグモのこのような防衛策がこれまで考えられていたよりもさらに洗練されたものであることを発見した。

 コーネル大学のクモ学者リンダ・レイオール(Linda Rayor)氏は、卓氏の研究を称賛したうえで、鳥の糞に擬態するのはギンナガゴミグモだけではないと指摘する。

 レイオール氏は、「決してめずらしい例ではない。ナゲナワグモなど、鳥の糞に擬態するクモはほかにも複数いる」と話す。

◆巣を使った擬態

 鳥の糞に似たクモの巣に捕食者を惑わせる効果があるのかどうかを調べるために、卓氏らのチームは巣の大きさを測定することにした。

 ギンナガゴミグモの巣の中央部は直径約6ミリ。調査基地内に落ちていた本物の鳥の糞の多くと、形も大きさもほぼ一致していた。

 次に、白い背中を持つギンナガゴミグモと巣の装飾の色のコントラストを測定したところ、捕食者が見分けることができないほど、ごくわずかな差しかないことがわかった。これによって、鳥の糞が巣の上のクモの擬態を助けているという仮説が裏付けられることとなった。

 最後に、チームは実験を行うことにした。野生のクモを捕獲して、クモの胴体か、鳥の糞に似た巣のどちらか一方を黒っぽく着色したうえで、屋外にビデオカメラを設置して、数日間観察を行うというものだ。その際、自然のままのクモについてもあわせて観察した。

 その結果、巣もしくは胴体を黒く塗られたクモは、巣も胴体も白い対照群と比べてはるかに高い確率で捕食者に襲われることがわかった。

 とは言うものの、はたして捕食者がギンナガゴミグモを鳥の糞として見ているのか、あるいは単にクモが環境に溶け込んでしまって区別がつかないだけなのか、判断するにはまだ時期尚早だ。

 今回の研究結果は「Scientific Reports」誌オンライン版に5月29日付けで発表された。

Photographs by Min-Hui Liu

文=Carrie Arnold

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