冬の異常気象は太平洋が原因だった?

2014.05.26
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歩道の雪かきに追われるアジム・ファジリ(Azim Fazili)さん。シカゴで2月17日に撮影。

PHOTOGRAPH BY NAM Y. HUH. AP
 北半球が乗り越えたばかりの冬の異常気象。原因は融氷の進む北極ではなく、一段と暖かい西太平洋だったとする気候学者の論文が、「Science」誌5月23日号に掲載された。 アラスカは暖かな日差しに照らされ、デトロイトを極寒が襲い、イギリスが洪水に見舞われた昨冬、アメリカ中西部では観測史上最低レベルの気温を記録した。一方、干ばつに苦しんだカリフォルニアをはじめとする西部の州では、記録的な暖かさとなった。

 凍えた人々とずぶぬれになった人々に共通なのは、彼らが異常な冬に耐えたというだけでなく、極渦という言葉を気象学者たちから繰り返し聞かされた点だろう。極渦は、北極上空の極めて冷たい低気圧を指し、通常は寒帯ジェット気流のためその場に留まる。しかし昨冬は、高速の風を吹かせるこのリング状の気流が北から南へと大きく蛇行し、北極の空気がアメリカに流れ込む形となった。

 一説では、ジェット気流の変化は北極の温暖化と海氷の融解が原因という。しかしオックスフォード大学の気候専門家ティム・パーマー(Tim Palmer)氏は、発端が西大西洋にあったと指摘する。「熱帯太平洋で起こる現象は、世界的影響をもたらすと言っても過言ではない」。

◆雷雨と台風

 パーマー氏の見方を簡単に説明しよう。昨冬、異常に暖かい太平洋の海水が大まかにフィジーからインドネシアまで広がり、激しい雷雨を引き起こした。嵐が生み出すエネルギーは大気上層に達し、ジェット気流の経路を変化させた。その結果、輪のような形状のジェット気流がアラスカに暖かい空気を送ると同時に冷たい空気が南へと流れ込み、大陸の残りが極寒に見舞われたというものだ。

 パーマー氏の仮説に対し、他の気候科学者たちからは支持と批判の両方の声が聞かれる。

「おおむね正しいと思う」と話すのは、コロラド州ボルダーにある国立大気研究センター(NCAR)の気候データ専門家ケビン・トレンバース(Kevin Trenberth)氏。昨冬、熱帯太平洋は「驚異的な降水量を記録した」と同氏は言う。「北アメリカをジェット気流の波が横断する一因となった可能性がある」。

 一方、北極に原因があると主張する人々は、より慎重な態度を見せる。「新たなメカニズムの可能性を示すものだが、議論を証明するまでの道のりはまだ長い」と指摘するのは、北京にある中国科学院の気候科学者チウホン・タン(Qiuhong Tang)氏。「議論を裏付けるような、観測に基づく根拠が論文にはほとんど見当たらない」。

 しかし、ラボックにあるテキサス工科大学の気候科学者キャサリン・ヘイホー(Katharine Hayhoe)氏は、「二つの見方は必ずしも競い合うものではない。互いが補完関係にある可能性もある」と話す。

◆真の原因は?

 パーマー氏は、人為的な気候の変化によって自然気候変動が増幅された結果、昨冬の荒々しい気象が生じたと見ている。西太平洋の海水が暖かいのは自然な現象だが、地球温暖化の影響で海面温度はさらに上がっているという。

「熱帯海域の温度が0.1度上昇しただけでも、気候に多大な影響を及ぼす」と同氏は付け加える。

 北極の温暖化が異常気象をもたらしたとする説は、人為的な気候変動をより直接的な原因とする。正しければ、今後も同様の冬が相次ぐはずだ。だが、異常に暖かい西大西洋が第一の原因とするパーマー氏が正しければ、前回のような冬はそれほど頻繁に見られないだろう。エルニーニョ現象の発生が見込まれる中、前回よりは平年に近づくのではと予測する同氏の考えは、来冬試されることになる。

PHOTOGRAPH BY NAM Y. HUH. AP

文=Dan Vergano

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