ミャンマー内戦、停戦の障害は違法伐採

2014.05.22
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チークの丸太を積み、イラワジ川を下る運搬船。多くの場合、違法伐採された材木はこの後、トラックで中国へ運ばれる。

PHOTOGRAPH BY THIERRY FALISE. LIGHTROCKET VIA GETTY IMAGES
 熱帯の広葉樹が残るミャンマーの森林は、東南アジア本土における材木伐採の最後の開拓地だ。中国の国境まで徒歩2~3時間のミャンマー北東部カチン州では、数週間前まで材木を満載したトラックが毎日100台近く通り過ぎていた。 カチン独立組織(KIO)の軍事部門カチン独立軍(KIA)は、自治権を求めて息の長い闘争を50年以上続けている。

 縮小を続けるミャンマーの平地林を起点にする中国への主要な密輸ルートは、4月までKIAが掌握していた。

 材木輸送の18トントラックが通過する度にKIOは通行料を徴収しており、2013年だけで5000万元(約8億円)ほどの収入を得ていたという。8割のトラックは、成長著しい中国を目指す。

◆国境での対立

 ミャンマー第2の反政府組織KIOは、恒久的な停戦協議を拒絶し続けている最後の主要組織だ。実現すれば、世界で最も長い内戦の1つが終結へと踏み出すことになる。

 KIOの戦略部門を率いるザウ・タウン(Zau Tawng)氏は、「平等の権利を手に入れるまで革命は続く」と断言。

◆“規律ある民主主義”

 3年前、ミャンマーの軍事政権は軍服を脱ぎ捨て、西側諸国への接近を試み始める。

 この“規律ある民主主義”への移行は、数十年に及んだ破壊的な悪政に対する終止符を意味していた。

 ただし、政治・経済両面の大転換を全うするには、テイン・セイン大統領と改革派の同志が、KIOをはじめとする国境地方の反政府組織と和平を結ぶ必要がある。

 国情が安定すれば市場は開かれ、東南アジアとの輸出入も活性化する。さらに、海外投資も盛んになり、長く放置されていた地方の開発にも着手が可能になるだろう。また、西側出先機関との信頼関係も構築が見込める。

◆チェーンソーを握った政府

 1948年の独立後、当時のビルマ政府は、破壊的、そしてときには奇妙な改革を繰り返し、経済を急激に悪化させた。

 財政破綻に陥った軍事政権は、木材輸出に活路を見出そうとした。ミャンマー森林認証委員会(Myanmar Forest Certification Committee)の委員長シュエ・キャウ(Shwe Kyaw)氏は、「独立後は過剰な伐採に走らざるを得なかった。国のためとはいえ、まるで抑えが効かない状態だった」と振り返る。

 国連食糧農業機関(FAO)が信頼できるデータを総合した結果、ミャンマーは1990年からの30年間に20%近くの森林を失った可能性があるという。

 意外なことに、欧米の「善意」あふれる活動家たちにも責任の一端があると、キャウ氏は主張する。

 1990年、選挙に大敗した軍事政権は退陣を拒否。人権活動家や組織に押された西側諸国は、厳しい経済制裁を実行した。その結果、閉ざされた政府はさらに孤立を深めてゆく。

 商業の中心地ヤンゴンのオフィスでキャウ氏は、「制裁で外貨が枯渇したため、交換可能な“通貨”に頼ることになる」と振り返る。「チーク材は重要な資源の1つだった。それだけ圧力が大きかったのだ」。

 政府公表のデータによれば、1994~95年のシーズンは15万立方メートルだった広葉樹の材木の輸出量が、2009~10年には8倍の120万立方メートルまで増加している。

◆密輸に“課税”

 1994年、軍事政権との一時停戦に合意したKIOは、カチン州東部の重要なヒスイ鉱区を放棄し、材木に目を向けた。世界的な天然資源の監視団体グローバル・ウィットネス(Global Witness)によれば、KIOが掌握する地域で森林伐採が急増したという。現在も、黒々とした丸裸の斜面が大地の傷跡として放置されている。

 2002年、KIOは商業伐採を禁止し、金や翡翠(ひすい)の密輸に“税”を課して収入源を確保する。材木取引にも課税しているが、その規模は比較的小さいという。

 にも関わらず、今年に入ってからの中国向けの材木の密輸は、過去最高の水準を記録していると、複数の自然保護団体が指摘している。

◆政策が裏目に

 改革派の現政権は4月1日、ヤンゴンの港から未加工の木材輸出を全面的に禁止。陸路での中国向け輸出は2006年に既に禁止されている。森林資源減少の圧力軽減や国内への消費転換、加工産業による付加価値向上が主な目的だ。

 一方、政権の意図に反して、中国への違法輸出が増える可能性を自然保護団体は懸念している。

 禁止措置が施行されてから11日後、ミャンマー軍は違法伐採を阻止するという名目で国境検問所を掌握した。

 軍の急襲についてKIOは、森林を守るという大義名分より、KIOの重要な収入源を断つ意図があったと見ている。

 恒久的な停戦合意の期限は8月に迫っている。実現の見込みが遠のいた現在、ミャンマーの森林の危機的状況はこのまま続く可能性が高い。

PHOTOGRAPH BY THIERRY FALISE. LIGHTROCKET VIA GETTY IMAGES

文=Hereward Holland

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