エジプトの紅海県にある都市フルガダの沖合で漁の準備をする2人の漁師。釣り糸を使う代わりに、海に投げ入れた網を曳いて漁を行う。

PHOTOGRAPH BY EMESE BENKO / ASAblanca VIA GETTY
 深海での底引き網漁が海洋生物に“壊滅的な影響”を及ぼす可能性があることが、地中海の海底峡谷の調査から見えてきた。 漁網を船で曳いて魚を捕獲する底引き網漁の起源は1300年代にまで遡る。沿岸の漁業資源の減少が進むなか、底引き網漁を行うトロール船は世界の大陸棚にまで進出し、今では水深200メートルの深海で漁を行っている。

 深海底で漁網が引きずられると、どのようなことが起こるのか。ゆっくりと成長する海洋生物への害はあるのだろうか。イタリアのアンコーナにあるマルケ州立ポリテクニック大学のアントニオ・プセッドゥ(Antonio Pusceddu)氏の主導で作成された報告書には、良い影響は一切ないと書かれている。

 今回の調査では、スペイン沖に位置する水深2200メートルの深海に約40キロにわたって伸びる地中海の峡谷で、底引き網漁の漁場と自然のままの環境とを比較した。

 その結果、底引き網漁が行われている峡谷の堆積物は、影響を受けていない海底に比べて有機物の含有量が52%少ないことがわかった。海生環形動物についても底引き網漁の漁場のほうが80%少なかった。また、底引き網漁が行われている海底では種の多様性が2分の1にまで減少していた。

「最終的には、集中的な底引き網漁が繰り返されることで、大陸棚の動物相が破壊され、海中の景観が著しく損なわれることになる」と報告書は述べている。

 今回の調査結果は「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に5月19日付けで発表された。

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文=Dan Vergano