崩壊を始めた南極西部の氷河

2014.05.15
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パイン・アイランド氷河盆地(Pine Island Glacier Basin)などの氷河では、降雪を上回る速度で氷が溶け出しており、その影響で南極の氷が薄くなっている。最新の研究によれば、棚氷が溶けることで、その背後にある氷河も崩壊し始めているという。

MAP BY MARTIN GAMACHE / NG STAFF
 地球温暖化によって南極西部の巨大な氷河が崩壊を始めている。12日、大幅な海面上昇を招く可能性を警告する2つの重要な研究論文が発表された。 南極西部の厚さ3.2キロの氷河は、あと数千年は安定した状態を保つと考えられてきた。ところが実際は、数百年後には完全に消失する可能性が高いと論文は示唆している。 カリフォルニア大学アーバイン校(UCI)とNASAの共同研究チームによれば、西南極氷床で急激に進む融解は不可逆的で、このままでは丸ごと海に沈んでしまうという。

 UCIで地球科学の教授を務めるエリック・リグノ(Eric Rignot)氏は、「氷の後退は海面上昇に重大な影響を及ぼすだろう」と警告。リグノ氏が主導した論文はアメリカ地球物理学連合の学術誌に掲載されている。

 12日、リグノ氏は電話での記者会見を通じて、40年間の観測を基にまとめた今回の論文では、アムンゼン海の6大氷河が“後戻りできないところまで来てしまった”証拠を提示していると説明した。

◆溶ける南極の氷河

 パイン・アイランド氷河盆地(Pine Island Glacier Basin)などの氷河では、降雪を上回る速度で氷が溶け出しており、その影響で南極の氷が薄くなっている。スウェイツ氷河はいずれ海に沈み、一帯の氷が不安定な状態に陥る恐れがあるという。

 太平洋側のアムンゼン海に面した一帯では、多くの氷が海面以下に存在し、比較的温かい深海水の影響で海にせり出す棚氷が薄くなっている。

 例えば、パイン・アイランド棚氷下部では30立方キロ以上の温かい海水が毎日循環し、進行する氷の融解が氷河の移動を促している。

 南極海には、大陸の周囲を深海水が循環しているが、世界的な気候変動の影響下で、風や海の循環に変化が発生。氷に覆われた南極西部の沿岸に流れ込む温かい海水が増加している。

 リグノ氏によれば氷がすべて溶けた場合、海面上昇は少なくとも1.2メートルに及び、その速度も大方の予想を上回っているという。カリフォルニア州パサデナにあるNASAジェット推進研究所(JPL)で氷河の研究も行っているリグノ氏は、海面上昇に関する試算を見直す必要があると述べている。

 また、このままのペースで溶け続ければ、2世紀ほどで氷河は消失すると予測している。ただし溶融速度の試算には、より高度なコンピューターモデルが必要とも付け加えた。

◆意外な事実が明らかに

 いくつかの新しいコンピューターモデルは、12日に発表されたもう1つの論文の根拠になっている。その内容も、安定しているはずの南極西部の主要な氷河が崩壊を始めているというNASAの主張を裏付けている。

 シアトルにあるワシントン大学で氷河の物理的性質を研究するイアン・ジョーギン(Ian Joughin)氏によれば、アムンゼン海のスウェイツ氷河は“数千年にわたって安定した状態を保つ”と考えられてきたという。

 ところが、ジョーギン氏が主執筆者を務めた「Science」誌掲載の論文は、「崩壊の初期段階を迎えている」と警告。

 温暖化の速度や降雪量によるが、スウェイツ氷河は最短で200年ほどで消失し、世界の海面は約60センチ上昇すると分析している。

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文=Brian Clark Howard

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