ワニの涙をすするチョウとハチ

2014.05.09
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メガネカイマンの涙を飲むチャイロドクチョウとハナバチ。コスタリカ北東部を流れるプエルト・ビエホ川で2013年撮影。

Photograph by Carlos de la Rosa / Organization for Tropical Studies
 昨年12月のこと、コスタリカのプエルト・ビエホ川をボートで下っていた一行が奇妙な光景に出くわした。チョウとハチがワニの目にとまって、涙を飲んでいたのだ。 グループを率いていたのは、水域生態学者でコスタリカのサンペドロにあるラ・セルバ生物ステーションの所長を務めるカルロス・デ・ラ・ロサ(Carlos de la Rosa)氏。すぐさまこの出来事を写真に収めた。

◆涙を飲む理由

 ガやチョウ、ハチなど、多くの昆虫が動物の涙を摂取することが分かっている。対象となる動物は哺乳類が多く、人間の涙を飲む例も確認されている。

 爬虫類の涙を摂取するケースはあまり知られていないものの、いずれの場合も、虫たちは栄養分とミネラル(主に塩分)を補給しようとしてこのような行為に及ぶものと考えられる。

「ナトリウムをはじめとする微量栄養素を自然のなかで見つけるのは容易ではない」とデ・ラ・ロサ氏は説明する。「チョウやハチは花の蜜を吸うが、蜜には塩分はあまり含まれない。だが、産卵や代謝のためには塩分をとる必要がある」。

 生命維持に必要なミネラルを求め、虫たちは涙、汗、糞、尿などに群がる。カ(蚊)のような吸血性昆虫の場合は血液を摂取する。

 これと同様の行為に“吸水行動”と呼ばれるものがあり、こちらのほうはより解明が進んでいる。この習性を持つチョウなどの昆虫は、ミネラルが沈殿した水たまりに群がり、吸水を行うことが分かっている。

「チョウが地面に降りてきて水を飲んでいる姿を目にすることがあるが、通常これは塩分補給のために行われるものだ」と、フランスのトゥール大学で生態学を教えるジェローム・カザス(Jerome Casas)氏は説明する。「塩分は生物学的な用途に用いられるか、もしくは精子を通してメスの体に入ることになる。つまり、非常に大切なものというわけだ」。

◆共生関係

 涙を摂取する行為を共生と見るかどうかは、この言葉をどう定義するかによって変わってくる。両方の動物が互いに相手から利益を受けることが必要なのか。それとも、どちらか一方が利益を享受するだけで共生と言えるのか。

 デ・ラ・ロサ氏は後者を支持する。涙を提供する動物にはこれといった恩恵はないが、かと言って涙を吸われることで害を受けることもないようだ、とデ・ラ・ロサ氏は言う。動物によっては涙を飲まれることが平気な種類もいるらしい。

「これまでのわずかな観察例から判断するかぎり、カイマンは涙を吸われても一向に意に介さないようだ。一方で、カワガメは目の近くをハチがうるさく飛び回るのを嫌がる。ハチを追い払おうと頭を振り、とうとう川の中に潜ってしまったのを見たことがある」。

 ワニやカメはじっとしていることが多いため、ウシなどの大型哺乳類に比べて、塩分を求める昆虫の標的になりやすいとカザス氏は考えている。

「ワニやカメはあまり動き回ることがない」とカザス氏は言う。「いったん腰を落ち着けたら、そのまま何時間でもじっとしている」。

 今回の観察結果は「Frontiers in Ecology and the Environment」誌5月号で報告されている。

Photograph by Carlos de la Rosa / Organization for Tropical Studies

文=Stefan Sirucek

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