バック転で移動する新種のクモ

2014.05.09
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“バック転”をするモロッコのクモ、ケブレヌス・レケンベルギ。

Photograph by Ingo Rechenberg
 モロッコで、危険に遭遇するとバック転しながら逃走するという新種のクモが見つかった。 この新種は、学名をケブレヌス・レケンベルギ(Cebrennus rechenbergi)といい、モロッコのシェビ大砂丘(Erg Chebbi)に生息する。砂の上をたやすく後転跳びで移動するその特徴的な動きから、“フリックフラック・スパイダー”(バック転グモ)と呼ばれる。

 このクモのユニークなところは、体操技だけではない。糸を吐いて作った構造物の中で、砂漠の焼けつく暑さをしのぐ習性もある。

 ドイツ、ベルリン工科大学の科学者インゴ・レッヒェンベルク(Ingo Rechenberg)氏は、まったく別の調査でこの北アフリカの砂丘を訪れた際、そこで初めてバック転をするクモを目撃し、新種ではないかと考えた。

「クモを発見するとすぐ、レッヒェンベルク氏は砂や埃にまみれた姿のまま、私の研究室にやってきた」と、今回の研究著者でドイツ、フランクフルトにあるゼンケンベルク研究所でクモを研究するペーター・イェーガー(Peter Jager)氏は話す。

 すぐさま興味を抱いたイェーガー氏は、このクモが、獲物を捕らえる巧みさから英語で「huntsman spider」(狩猟グモ)と呼ばれるアシダカグモ科の仲間であることを突きとめた。この新種ケブレヌス・レケンベルギは、シェビ大砂丘でしか見つかっていないが、地中海沿岸一帯の砂漠には、同じケブレヌス属のクモが生息する。

 ただし運動能力において、ケブレヌス・レケンベルギは近縁種よりも上手のようだ。例えば、ゴールデン・ホイール・スパイダー(golden wheel spider)という近縁種は、砂丘を転がり下りることしかできないが、新種は転がりながら登ることもできる。「生物学上の驚異だ」とイェーガー氏。

◆クモを模したロボット

 イェーガー氏によると、新種のクモの体操技は、脅威を感じたときに繰り出されるという。これは、捕まえたクモを使った研究室での実験と、レッヒェンベルク氏による現場での観察に基づいて導き出された結論だ。

「私は床に座り込み、(クモに)この行動をとらせるために、できる限りのことを試してみた。私は二度しか成功しなかったが、レッヒェンベルク氏は現場の砂丘でほぼ毎回クモを回転させた」とイェーガー氏は述べる。

 また両氏の観察によるとこのクモは、ヘビなどの自分を捕食しそうな相手に遭遇すると、後ろ肢で立ち上がって追い払おうとしたり、体当たりして驚かそうとすることもあるという。

 このクモの「独創的な移動方法」にヒントを得て、レッヒェンベルク氏は小さなクモ型ロボットを作製した。

 現地のベルベル語で“クモ”を意味する「tabacha」にちなみ、「タボット」(Tabbot)と名づけられたこのロボットは、歩いたり回転したりして移動する。「このロボットは農業や海底での作業、さらには火星探査にも応用できるかもしれない」と、レッヒェンベルク氏は声明の中で述べている。

◆重要な発見

 この新種のクモは「重要な発見」だと、マドリードにあるスペイン科学研究高等会議のクモ専門家、ジョルディ・モーヤ・ララーニョ(Jordi Moya-Larano)氏は述べる。同氏は今回の研究には参加していない。

 イェーガー氏の研究は「非常に包括的で、砂漠に生息するクモの多様性や生活様式を理解するのに役立つ」とモーヤ・ララーニョは述べる。

 研究を手がけたイェーガー氏は、今回の発見によって、この軽業師のようなクモが世間の注目を浴びたと話す。「このクモが世間で話題になるとうれしい。そう頻繁にはないことなので」。

 今回の研究成果は、4月17日付で「Zootaxa」誌に発表された。

Photograph by Ingo Rechenberg

文=Carrie Arnold

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