南極の氷は小さな栓で持ちこたえている

2014.05.06
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溶けていく氷の上に立つアデリーペンギン。東南極で撮影。

PHOTOGRAPH BY PAULINE ASKIN / REUTERS
 2人の気候研究者によれば、東南極の沿岸にある氷棚は小さな栓でふさがれており、それらの栓で数メートルの海面上昇が食い止められているという。 ただし、世界的な海面上昇が現実になるには、数世紀にわたって現在より温かい水にさらされる必要がある。4日、こうした研究結果が「Nature Climate Change」誌に発表された。

 もし南極の氷床がすべて解ければ、海面が60メートル上昇する。たとえ人為的な気候変動が起きても、これが現実になる可能性はほとんどない。ただし、わずかな海面上昇でも影響は甚大だ。

 西南極の海氷の力学は解明されつつあるが、東南極の研究は進んでいない。東南極には海面を53メートル上昇させるだけの凍結水が存在する。今回の研究では、東南極でも特にボウル状のウィルクス・ベイスン(Wilkes Basin)に焦点を当てた。ウィルクス・ベイスンは海面より低い位置にあり、海面を3~4メートル上昇させるだけの氷を持つ。

 氷床は固定されていない。絶えず陸から氷が加わり、氷山の融解や崩壊によって海に出て行っている。氷の出入りに差がなければ、その氷床は“バランス”を保っていることになり、質量は毎年ほぼ一定に維持される。

 ドイツ、ポツダム気候影響研究所(Potsdam Institute for Climate Impact Research)のマティアス・メンゲル(Matthias Mengel)氏とアンダース・リバーマン(Anders Levermann)氏は氷の出入りを操作し、ウィルクス・ベイスンの“バランスが崩れる”ほど海水温が上昇した場合に何が起きるかをシミュレーションした。中でも、陸から加わる氷がなくなった状況をつくり、海に出て行く氷を増やしてみた。

 すると、氷床の海岸近くに、氷が岩の背に食い込んでいる一角が見つかった。くさび状の氷が栓の役割を果たし、氷床をふさいでいたのだ。

 もしこの細い栓が解けてなくなれば、氷床は不安定になり、崩壊してしまう。そして、ウィルクス・ベイスンのボウルにある氷は海に流れ出し、世界中の海面が数メートル上昇する。

「栓がなくなれば、もはや止めることはできない」とリバーマン氏は話す。「(栓がなくなる)スピードはわからないが、間違いなく限界がやって来る」。

◆遠い未来の脅威

 ただし、ウィルクス・ベイスンの氷が近い将来に解けてなくなる心配はない。メンゲル氏とリバーマン氏のシミュレーションには400~800年分のシナリオ、現在よりセ氏1~2.5度高い海水温が使われている。

 アメリカ、シアトルにあるワシントン大学極地研究センター(Polar Science Center)のイアン・ジョーギン(Ian Joughin)氏は、「彼らが論じているのは現在よりはるかに高い海水温についてだ」と指摘する。

「大きな氷棚の下には大量の冷たい水が存在する」とジョーギン氏は話す。「西南極では、風が目まぐるしく変化し、温かい水が引き込まれてきた」。東南極の沖にも温かい水がある。ただし、温かい水が東南極の氷を浸食し、氷の栓、そして氷棚を危険にさらすまでには数千年かかるだろうとジョーギン氏は予想している。

PHOTOGRAPH BY PAULINE ASKIN / REUTERS

文=Larry O'Hanlon

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