飛行中のクロオウチュウ。クロオウチュウは餌を盗むために、ほかの鳥の鳴き声を真似る。

PHOTOGRAPH BY ABU BAKAR SIDDIK / NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT
 カラハリ砂漠のムクドリやミーアキャットにとって、つややかな黒い羽とガーネットのような赤い目を持つスズメ目のクロオウチュウは、近所のイヌのような存在だ。いつも警戒態勢で、危険な捕食者の存在を警告してくれる頼もしい友人といえる。 ただしそれは、嘘をついている時以外の話だ。というのも、オウチュウは偽の警戒声を発することがあるからだ。警戒声を聞いた動物たちは、どんなに美味しいごちそうを食べていようとも、餌を落としてその場から逃げてしまう。その間にだました鳥は急降下して、被害者の食事を奪い去るのだ。

 実際に野生生物を観察する人たちの間では、オウチュウの盗みの手法は有名だ。しかし時には、頻繁に「タカが来た」という警告を出し過ぎて、イソップ物語の“オオカミ少年”のように誰も聞いてくれなくなることも観察される。

 今回「Science」誌5月2日号に掲載された論文では、そのような場合にもずる賢いオウチュウは更なる奥の手を用意していることが報告された。

◆見張り番・・・のこともある

 南アフリカ共和国のケープタウン大学に所属する進化生物学者トム・フラワー(Tom Flower)氏は、カラハリ砂漠のクルマン川保護区に生息するオウチュウ約200羽を慣れさせ、識別バンドを付けて追跡調査を行った。

 オウチュウはたびたび、けたたましい金属音で警戒声を発した。オウチュウは木の枝に止まるため、猛禽に気付きやすい位置にいることが多く、賢いミーアキャットやほかの鳥たちはオウチュウが上げる警戒声に聞き耳を立てている。

 こうすることで捕食者に対して自分で警戒する時間を多く割く必要がなくなるため、ゆっくり餌をあさることができるのだ。

◆華麗なる詐欺師

 一つ問題がある。オウチュウの警戒声は嘘である場合があるのだ。

 例えばオウチュウがミーアキャットを付け回していて、ミーアキャットが美味しそうなイモムシやヤモリを見つけたとしよう。すると多くの場合、オウチュウは誠実な見張り番から他者を欺く泥棒に切り替わってしまう。実にオウチュウが一日に摂取する食料の23%は、偽の警戒声を使って標的の食事を盗むことで得ているのだ。

 オウチュウは彼ら自身の警戒声を使って被害者をだますこともあるが、繰り返し同じ鳴き声を発していると、標的はしばらくすると反応しなくなってしまう。こんな時オウチュウは、もう一つの戦術を試みる。音声擬態だ。

 オウチュウは鳥類、哺乳類を含めた非常に多く種の警戒声の引き出しを持っているということを、フラワー氏は発見した。これはおそらく、学習によって獲得されるものだろうと考えられる。種によってはいくつか異なる警戒声を持つものもあり、オウチュウが使える警戒声は全部で51種類にも上る。

 なぜこれほど多くのレパートリーが必要なのかを探るため、フラワー氏は共同研究者らとともに、オウチュウが発する様々な警戒声を使って再生実験を実施した。

 その内一つの実験では、チメドリの一種にオウチュウの警戒声、チメドリの警戒声を真似た声、ムクドリの警戒声を真似た声をそれぞれ録音音声で聞かせ、持っていた美味しい餌を手放してその場を離れる時間を計測した。はっきりした結果は、チメドリ自身やムクドリに擬態した警戒声を聞いた時にその場を離れる時間が長いというものだった。

 チメドリはまた、同じタイプの警戒声を3回聞くとその後はその声を無視した。しかし3回目をそれまでに聞いていない種の警戒声にすると、チメドリは慌てて逃げ出した。

◆どんでん返し

 次にフラワー氏のチームは、野生のオウチュウ42羽に識別バンドを付けて追跡し、同じ標的から繰り返し餌を盗もうとしている場合の151ケースの鳴き声を録音した。結果、その内74回で、オウチュウは警戒声の種類を変えていた。例えば2回オウチュウ自身の警戒声を発し、標的が逃げない場合は別種の警戒声に変える、といったことをしているようだ。

 オウチュウが何を考えて巧みに警戒声を切り替えているのかは分からないが、意図的に変えている訳ではないのではないかとフラワー氏は考えている。「オウチュウは標的に注意を払い、標的がどのように反応するかに応じて行動を変えている」のだろうとフラワー氏は述べている。

PHOTOGRAPH BY ABU BAKAR SIDDIK / NATIONAL GEOGRAPHIC YOUR SHOT

文=Virginia Morell