米西海岸、アザラシ類の救出数が増加

2014.04.21
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カリフォルニアアシカの子ども「ホッピー」。内陸約160キロ地点で救助され、海洋哺乳類センターで体力を 取り戻している。

PHOTOGRAPH BY SEAN BOGLE / THE MARINE MAMMAL CENTER
 この時期としては記録的な数のアザラシやアシカが、カリフォルニア州の治療施設に運び込まれている。運ばれた動物たちを診る主任獣医は、有毒な藻類の異常発生や季節的な要因など複数の問題が同時に起こる“パーフェクトストーム”のせいだと考えている。 非営利団体の海洋哺乳類センター(Marine Mammal Center)では、1月1日から4月22日現在までに386頭の動物 を受け入れているが、これは過去の同時期の統計で例を見ない数字だと、同団体の主任獣医ショーン・ジョンソ ン(Shawn Johnson)は述べている。

 海洋哺乳類センターでは年間通常600~800頭の動物の治療を行っているが、その数は増加傾向にある。1975年 の設立以来これまでに、同センターでは合計1万8000頭以上の動物を救ってきた。

 今年現時点で救助された動物の内訳は、カリフォルニアアシカ202頭、ゾウアザラシ145頭、ゼニガタアザラシ 33頭、グアダルーペオットセイ4頭、キタオットセイ1頭だ。

 その中で最も有名なのは、ホッピー(Hoppie)と呼ばれているアシカの子だ。ホッピーはその長旅で、多くの メディアで注目の的となっている。

◆ホッピーのとてつもない長旅

 ホッピーは3月31日、カリフォルニア州中部のサンルイス国立野生生物保護区内の内陸約160キロ地点で発見さ れ、海洋哺乳類センターに救助された。ジョンソン氏の話では、ホッピーはサンウォーキン川を遡上し、方向が わからなくなって水場から離れてしまったのではないかという。

 アシカが川を上ることは、短い距離であればしばしばあるという。しかし、場合によっては「小さな子どもが 餌場を見つけようとして道に迷い、どこを進んでいるのかわからなくなってしまうことがある」。

 心ある人がホッピーを発見しセンターに救助要請したとき、ホッピーは低体重、栄養失調状態だった。しかし センターに来てからは元気にしていると、広報担当者のローラ・シャー(Laura Sherr)氏は語る。

「彼はよく食べ、プールで泳ぎ回っている」ので、近いうちに海に返せるだろうと楽観視しているとのことだ。

◆複数の問題による“パーフェクトストーム”

 ジョンソン氏によると、救助されるアザラシ類の数が増加している原因は、(1991年北大西洋で発生した大嵐 になぞらえて)複数の要因によって最悪の事態を招く“パーフェクトストーム”のせいだという。第一に、セン ターではまだ幼いうちに母親から離れてしまったゾウアザラシの子どもが数多く保護されてきた。

「アザラシの子どもたちは自分で餌を探しに行って、見つけることができず、浜辺に打ち上げられてやせ細って いた」とジョンソン氏は語る。

 同じことは多くのカリフォルニアアシカでも起こっているという。

 今年のもう一つの問題は、モントレー湾で起きている大規模な藻類の異常発生だ。異常発生の原因はまだ科学 的に解明されていないが、その微小な珪藻類はドウモイ酸という毒素を産出する。この化合物は小型の魚類や貝 類、甲殻類などに取り込まれるが、ジョンソン氏によればこの時点での影響はなさそうだという。しかしより大 型の魚類がこれら小型の動物を摂取すると、生物濃縮という過程を経てドウモイ酸の生体内濃度は高まってい く。

 アザラシの仲間が大型の魚類を食べると、高濃度のドウモイ酸を摂取するおそれがある。ドウモイ酸は記憶障 害や発作を引き起こす原因となる。この化学物質は人間に対しても同様の問題を引き起こす危険性があり、現在 モントレー湾で採れた特定の魚介類を避けるよう、公式に勧告されている。

 海洋哺乳類センターでは今年、ドウモイ酸中毒で約40頭、多くは大人のアシカを治療してきた。この毒素に対 する解毒剤はないため、点滴や抗発作薬の投与などの対症療法に頼っている。

 投薬で発作を抑えることができないこともあり、その場合は安楽死させなくてはならないとジョンソンは語 る。神経障害の著しい兆候が見られる場合も自然界で機能させることができないので、やはり安楽死させなくて はならない。多くの場合アシカは回復し、海へ帰される。

 またジョンソン氏によると、「今秋大規模なエルニーニョが発生する懸念があり、動物たちに悪影響を与える おそれがある」という。

PHOTOGRAPH BY SEAN BOGLE / THE MARINE MAMMAL CENTER

文=Brian Clark Howard

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