劣化進むポンペイ遺跡に新たな修復プラン

2014.04.21
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2014年3月2日、ビーナスの神殿と墓所の壁が損傷しているのが見つかった。大雨が原因とみられる。

PHOTOGRAPH BY MARIO LAPORTA, AFP/GETTY
 崩壊の危機に瀕するポンペイ遺跡で、新たな保存計画が進行している。手本にしているのは、ポンペイとともに埋没した別の町だ。 イタリア政府は2014年4月、「グレート・ポンペイ・プロジェクト」の詳細を明らかにした。再発見から4世紀にわたって盗難の被害に遭い、観光客に踏み荒らされ、雨風にさらされてきた有名な古代ローマの都市を、1億500万ユーロ(約149億円)をかけて修復しようというプロジェクトだ。

 今回の修復では、非常に革新的な「維持ベース」のアプローチを試みると、先ごろ遺跡の監督者に任命されたマッシモ・オザンナ(Massimo Osanna)氏は、声明の中で述べている。

 具体的には、個々の建物や遺物に断片的な修復を施すのでなく、ポンペイとともに埋没した近くの古代ローマの町、ヘルクラネウムの保存活動を参考にするという。全体の維持を最優先課題にすることで、遺跡の公開できる部分を増やすのがねらいだ。

 ヘルクラネウム保存プロジェクトは、同遺跡を救う取り組みとして、過去10年にわたり評価を得ている。資金2000万ユーロ(約28億円)を投じた同プロジェクトは、カリフォルニア州ロスアルトスにあるパッカード人文研究所と、ローマにあるイギリス・ローマ研究所が共同で進めている。

 ポンペイでは今後、1年をかけて石造りの家屋や壁面、堤防(これらは雨に弱い)に水が入り込むのを防ぐ措置を施し、またセキュリティを強化して、遺跡にビデオカメラを設置するという。ポンペイ遺跡は、組織犯罪の多発するイタリア南部に位置する。

「これは非常に期待のもてる取り組みのようだ。しかし、修復は簡単には片付かないだろう。ポンペイほどの規模の遺跡を保存するには巨額の費用がかかる」と、古典学者で『The Fires of Vesuvius: Pompeii Lost and Found』(ベスビオ山の炎:ポンペイの消失と発見)の著者であるメアリー・ビアード(Mary Beard)氏は述べ る。「ヘルクラネウムの保存活動はたしかに参考になるが、遺跡の規模ははるかに小さい」。

◆遺跡の危機

 西暦79年、ベスビオ山の噴火によって灰に埋もれたポンペイは、再発見により、それまで街を埋め、保存する役割を果たしていた灰が除去されて以降、全体の4分の3近くの家屋、神殿、街路が風雨にさらされた状態にある。

 かつて1万2000人が暮らしていたとみられるポンペイは、今や世界的な観光スポットとなり、年間200万人以上が訪れる。観光客、盗賊、そして年月が、66ヘクタールに及ぶ遺跡の状態を悪化させており、今年3月には3つの壁面の崩落に加え、フレスコ画が一部盗まれる事件も発生した。

 近郊の町ヘルクラネウムは、ベスビオ山の噴火でポンペイより深く埋もれ、約25メートルの灰の下に沈んだ。ポンペイより規模は小さいが、ここも今では観光地だ。ヘルクラネウムの保存プロジェクトでは、屋根と排水設備を設置することで、修復の成果に大きな違いが生まれた。そして今度はポンペイの番だ。

「ヘルクラネウムでは、考古学者、保存専門家、エンジニア(など)が1つの包括的なチームとして共同で作業に取り組んだ。これこそ今後ポンペイがとるべき道だ。そしておそらくは他の多くの遺跡も」とイギリス、リーズ大学の古典学者バージニア・キャンベル(Virginia Campbell)氏は述べる。

「といっても、遺跡はそれぞれ保存状態や直面する問題が大きく異なり、もちろん規模も全く違う。したがって、基本的な手法は当然ポンペイにも取り入れるべきだが、ヘルクラネウムに比べて成果が目につきにくく、また時間も費用も大幅に上回るだろう」とキャンベル氏は述べている。

PHOTOGRAPH BY MARIO LAPORTA, AFP/GETTY

文=Dan Vergano

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