最新の研究によれば、写真のレモンザメをはじめとする現代のサメはこれまで考えられていたほど原始的ではないという。

Photograph by Bernard Radvaner, Corbis
 古生物学者の間では長年、サメは体形と体内の構造のちょうどいいバランスを早い時期に見つけ、それから何億年もの間、進化の力はあまり働いていないと考えられてきた。しかし、3億2500万年前のサメと思われる化石のわずかな骨が、これまでの概念を覆すかもしれない。 ニューヨークにあるアメリカ自然史博物館(AMNH)が主導する研究チームによれば、化石のサメのえらを支えている構造は現生種のサメより、マグロやキンギョといった現代の硬骨魚に近い。また、この構造はアーチ状に並んだ骨や軟骨だが、その配列は板皮類、棘魚類と呼ばれるすでに絶滅した古代の魚に似ているという。

 研究に参加したAMNHの古脊椎動物学者ジョン・G・メイジー(John G. Maisey)氏は、「この点では、現代のサメは生きた化石というより、むしろかなり進化していると言える」と話す。

「Nature」誌に16日付で発表された研究論文には、もし鰓弓(さいきゅう)と呼ばれるエラの土台、そして初期の魚の進化をもっと理解したいのであれば、現生種のサメより現代の魚を見るべきだと書かれている。鰓弓は脊椎動物のアゴや人間の耳骨に進化したと考えられている。

◆過去をのぞき見る

 メイジー氏によれば、サメは何百年もの間、原始的なアゴを持つ脊椎動物の好例として引き合いに出されてきたという。「しかし、初期のサメの化石を調べようとする者はいなかった」。保存状態の良い古代のサメの化石がほとんど存在しないことや技術的な制約がその理由だ。

 幸運なことに、メイジー氏らはアメリカ、アーカンソー州のオザーク高原で保存状態の良い化石を発見した。化石は新種の古代のサメで、オザーカス・マペサエ(Ozarcus mapesae)と命名された。化石には立体構造を保った鰓弓(さいきゅう)が含まれていたため、化石をスキャンし、高解像度のコンピューターモデルを作ることができた。

 メイジー氏らはO.マペサエの鰓弓を古代の魚、現代の魚のものと比較した。「基本的な配列を見る限り、O.マペサエはこれらすべての共通祖先とみなすことができる」。

 一方、現代のサメは鰓弓の配列が異なり、O.マペサエの後に進化した可能性が高い。そのため、鰓弓とその後に登場したアゴの進化を知りたい場合、現代のサメを調べても意味がないと、メイジー氏らは結論づけた。調べるべきは硬骨魚だ。

「われわれは挑戦に打って出ようとしている」とメイジー氏は話す。「これこそが初期のサメの実態だ。アゴを持つ脊椎動物の進化について、これまでの概念を覆す研究結果だ」。

◆系統樹のどこに属するか

 イギリス、オックスフォード大学の古生物学者マット・フリードマン(Matt Friedman)氏は、O.マペサエが魚類の系統樹のどこに属するかを決めるにはさらなる研究が必要だと考えている。ただし、技術の進歩のおかげで今回のような研究が可能になり、この分野が一種のルネサンスを迎えていることには胸を躍らせている。技術の進歩が、こうした動物の進化について新たな見地をもたらしたのだ。

 ただし、サメのファンは期待するかもしれないが、サメが生きた化石であるという理論がすぐに覆されることはなさそうだ。「すでに定着している理論だ」とフリードマン氏は話す。「教科書から記述が消えることはないだろう」。残念ながら、変化が起きるにはまだしばらくかかるようだ。

Photograph by Bernard Radvaner, Corbis

文=Jane J. Lee