チンパンジーは眠りやすいベッドを作る

2014.04.18
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
ひと休みするメスのチンパンジー。タンザニアのゴンベ国立公園で。

PHOTOGRAPH BY CYRIL RUOSO, JH EDTITORIAL/MINDEN PICTURES/CORBIS
 チンパンジーは、夜の寝場所を作るのに、できるだけ頑丈で安定した樹の枝を選んでいることが、新たな研究から分かった。 研究を率いたネバダ大学ラスベガス校の人類学者デイビッド・サムソン(David Samson)氏によると、この研究は、良質の睡眠が現生人類の進化につながったとする説を補強するものでもあるという。

 チンパンジーは、樹木の高いところに枝を集めて巣(ネスト)と呼ばれるベッドを作る。その際には、決まった種の樹木を使う。夜の間はこの寝床の上で8~9時間ほど過ごす。

 しかし、今回の研究で、チンパンジーがどのようにしてベッドの素材を選んでいるかが初めて分かった。

 サムソン氏らは、ウガンダ西部のトロ・セムリキ野生生物保護区のチンパンジーが最もよく利用する7種の樹木について、硬さと、曲げに対する強さを測定した。また、それぞれの樹種について、葉の表面積と枝の構造にも注目した。

 結果は驚くべきものだった。調査した1844の巣のうち、73.6%でウガンダ・アイアンウッド(学名:Cynometra alexandri)という丈夫な樹木が使われていた。この樹木は、調査地域の全樹種中9.6%を占めるにすぎないにもかかわらずだ。

「比較的珍しい樹なのに、チンパンジーは10回中7回は”この樹で眠りたい”と考えるのだ」と、サムソン氏は話す。

◆丈夫な木材

 トロ・セムリキ野生生物保護区のチンパンジーが樹の上で眠る理由の1つは、夜の間にヒョウやライオンなどの捕食動物に襲われないようにするためだ。

 したがって、寝ている間に落ちたりしないよう、ベッドはごく丈夫に作る必要がある。アイアンウッドは、調査した7種の樹木中、最も強度が高く、そのためベッドの素材に最適なのだろうと、サムソン氏は推測する。

 また、チンパンジーはベッドの強度を確保するために枝を編み合わせるが、アイアンウッドは枝分かれの間隔がちょうど編みやすい長さになっている。

 アイアンウッドを使うことで「丈夫な噛み合わせを作れる。ベッドのマットレスのスプリングが少し密になるのだ。チンパンジーは、私たちと同じように、快適な眠りを気に掛けている」。

 チンパンジーは、アイアンウッドが「特別な樹」であることを知っていて、「これらの性質を認識できるのだ」とサムソン氏は話す。

 ミシガン大学アナーバー校の生物学的人類学者アーロン・サンデル氏は、類人猿の睡眠については十分な研究がなく、今回の研究は「素晴らしい着想」だと評価する。サンデル氏は今回の研究に参加していない。

 サンデル氏も、「チンパンジーは全般に安全性と巣の作りやすさに基づいて樹を選ぶ」という結論に同意する。

 アフリカのほかの地域のチンパンジーはどうだろうか。サムソン氏は、ほかの群れも、生息環境と利用できる樹種に応じて、それぞれ最も眠りやすい樹を選んでいる証拠があると話す。

◆睡眠が脳の進化をもたらした?

 サムソン氏が最終的に知りたいと考えているのは、睡眠が人類の進化に何らかの役割を果たしたかどうかだ。

 実際、寝床を作るというのは、大型類人猿(人類を含む)に独特の行動だ。ほかの霊長類は枝の上で眠る。

 2300万~500万年前の中新世のどこかの時点で、類人猿は枝の上でそのまま眠ることをやめ、寝床を作るようになった。その結果、夜の眠りの質が向上した。

 人類とオランウータンの両方の研究から、睡眠の質が上がり、レム睡眠の時間が増えると、認知と記憶が向上することが分かっている。古代の類人猿も、眠りが改善して、脳が大型化したのかもしれない。

 しかし、「類人猿の脳が大型化したために長時間の睡眠が必要になったのであって、その逆ではない可能性もある」とサンデル氏は指摘する。

 いずれにせよ、認知能力を向上させる力が加わったことは、間違いなく類人猿と人類に進化上の強みを与えたはずだとサムソン氏は話す。 「大きな脳は大きな枕を必要とするのだ」。

 この研究は、オンライン科学誌「PLOS ONE」に4月16日付で発表された。

PHOTOGRAPH BY CYRIL RUOSO, JH EDTITORIAL/MINDEN PICTURES/CORBIS

文=Christine Dell'Amore

  • このエントリーをはてなブックマークに追加