恋に効く、可能性を秘めた4種の媚薬

2009.02.12
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男性の性機能障害の治療薬、バイアグラとシアリス。人は愛とセックスを手助けしてくれる薬を必死になって求める。その結果、まがい物が薬箱に納まることも多い。

 現在の“ほれ薬”はほとんどがSFやファンタジーの世界に属するものだが、将来は人の“スイッチ”のオンとオフを切り替える薬が実現するかもしれない。

Photograph by Kin Cheung/AP
あの花を摘んできてくれ、
いつか見せたことのある花だ、
その汁を絞って眠る者のまぶたに塗ると、
男でも女でも激しい恋心がわき出し、
目が覚めて最初に見た人に夢中になるのだ。
―― W. シェークスピア 『夏の夜の夢』第2幕第1場より 吟遊詩人の時代のはるか以前から人々は“ほれ薬”を求めてきた。バレンタインデーほどその需要が高まるときもないだろう。万能の媚薬(びやく)などというものは依然として空想の域を出ないが、現在開発の進んでいる4種の薬に関しては、将来恋に悩む人にとって希望の光となるかもしれない。

ほれ薬

 まず、“ほれ薬”はそもそも実現できるのかという点が問題となるが、それにはある小さな動物が鍵を握っているという。人間以外に一夫一妻制をとる数少ない哺乳類の一種にプレーリーハタネズミがいる。プレーリーハタネズミが生み出すホルモンは、性的魅力を増強し、一雌一雄関係や営巣行動を促進することが知られている。

 これまでの研究により、同じ化学物質が人間にも適用できる可能性のあることがわかっており、将来は愛を活性化する飲み薬として市販されるかもしれない。

 アメリカのジョージア州アトランタにあるエモリー大学でネズミなどの齧歯類(げっしるい)を研究しているラリー・ヤング氏は、「このオキシトシンというホルモンは人と人との信頼関係を向上し、互いの感情の波長を合わせる効果を持つと考えられている。したがって、愛をはぐくむ成分の1つとして利用できる可能性も十分にある」と説明する。

フェロモン

 異性を引き付ける要素として「フェロモン」という言葉を聞くことも多いだろう。1959年、ドイツの化学者ブーテナントらが、動物が発する化学物質による伝達信号を説明するためにフェロモンという言葉を作り出した。2009年はちょうど生誕50周年に当たる。

 ただし、人間にフェロモンが存在しているのかはいまだ謎である。それにもかかわらず、インターネット上では性的魅力を高めるフェロモン効果をうたった製品があちこちで販売されている。きちんと証明されるまでは、おそらくチョコレートや花の方が安全策だ。

記憶の消去

 過去の経験が愛の障害となっていることもあるかもしれない。近年、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関する研究が進展し、いくつかの実験結果から、悲痛な記憶の精神的影響を対処可能なレベルにまで引き下げる薬を作り出せる可能性があることが示されている。ただし、そのような薬が生まれても、特定の記憶を消去できるわけではない。

 カナダのモントリオールにあるマギル大学のカリム・ネーダー氏は、「PTSDの場合、あまりにも強い感情により通常の脳メカニズムが圧倒され、記憶を乗り越えて前に進むことができなくなってしまうのだ」と指摘している。

女性用バイアグラ

 現在、女性の性欲を増強するといわれるフリバンセリンという薬が臨床実験中である。アメリカのサンディエゴにあるアルバラド病院・性機能センターのアーウィン・ゴールドスタイン氏は、「フリバンセリンは基本的に、興味や関心を増大させる化学物質ドーパミンを増加させる薬だ」と話す。

 一方のバイアグラは、「血流に問題がある女性で、テストステロンが通常レベルであれば完全に機能する。ただし、バイアグラはバイアグラにできることしかできない。結婚相手があなたを放ったらかしにしていびきをかいて眠るような人であれば役に立たない」。

Photograph by Kin Cheung/AP

文=Brian Handwerk

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