カップルへの酒の影響、オスメスで違い

2014.04.11
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プレーリーハタネズミは長年、人間のカップルの結びつきに関する研究における実験用モデルとして採用されてきた。この種は社会的に一夫一婦制、つまり同一のパートナーと長期にわたる関係を結ぶことで知られている。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic
 アルコールが社会的行動に与える影響は広く知られている。土曜の夜にどこかのバーに行けば、アルコールの力を借りて虚勢を張ったり、忍び笑いをしたり、戯れたりする姿が目に入るはずだ。 さらには男女の間で、酔っている時のパートナーに対する態度に違いがあることにも気づくかもしれない。このような、バーなどで見かける男女の行動差の裏に、脳内の化学物質の働きがあることを明らかにする、新たな研究成果が発表された。ただしここで対象となっているのは人間ではなく、プレーリーハタネズミだ。

 この研究は、プレーリーハタネズミにおいて、社会的な結びつきを制御する神経系に対し、アルコールがオスとメスで正反対の効果をもたらすことを明らかにするものだ。

 この研究では、24時間にわたってプレーリーハタネズミのつがいを一緒に飼育し、その間アルコールを与えた。するとそれに続く3時間の「パートナー選択」テストで、オスはもともとのパートナーではなく、見ず知らずの相手と時間を過ごすことを選ぶケースが多かったという。

 対照的に、大多数のメスは、ほろ酔い状態でオスに出会うと、相手と「触れ合う時間」をより多く求める傾向にあった。これはこの種の動物ではより深い関わりを示唆する行動だ。また、社会的行動を制御する神経系についても、雌雄で対照的な変化が見られたという。

 この研究を主導したオレゴン健康科学大学のアンドレイ・リャビニン(Andrey Ryabinin)氏は、「アルコール摂取が社会的な結びつきに直接作用し、しかもこうした影響が神経ペプチドの変化と並行して起きることを示した最初の例だ」と意義を解説している。

◆プレーリーハタネズミが一夫一婦制のモデルとして使われる理由

 プレーリーハタネズミは長年、人間のカップルの結びつきに関する研究における実験用モデルとして採用されてきた。この種は社会的に一夫一婦制、つまり同一のパートナーと長期にわたる関係を結ぶことで知られている。

 人間とプレーリーハタネズミには、ほかにも共通点がある。両者の脳はともに、他の個体とのふれあいや薬物に関係した意識変容状態を快感と捉える。また、ストレスに対する心身の反応も似ている。人間とプレーリーハタネズミに共通してみられるこれらの行動は、こうした体験すべてに、同一のホルモンや神経ペプチドが関係していることによるものだ。

「さらにプレーリーハタネズミには、アルコールを喜んで飲むという性質もある」と、リャビニン氏は解説する。

 今回の研究で、プレーリーハタネズミは何も入っていない水よりもエタノールを10%混ぜた水を好んで飲んだという。

 だが意外なことに、酒をたっぷりと飲んだプレーリーハタネズミのカップルに起きる変化は、アルコールが繁殖や攻撃的行動、運動能力などに与える影響の結果として生じるものでないという。

 実際、一緒に飼育された雌雄の間における、繁殖や攻撃的な行動の頻度に関しては、アルコールによる有意の影響は確認できなかったという。「つがいの絆に対する影響は、こうしたものとは独立して発生した」とリャビニン氏は説明している。

 最初は意外に思えるが、神経ペプチドにおける雌雄の対照的な変化は、「この動物がストレスに対処するやり方の違いを反映しているのかもしれない」と、リャビニン氏は考えている。プレーリーハタネズミの神経系においてアルコールが影響を与える部分は、不安のレベルを制御するものと同じだからだ。

 リャビニン氏は、社会的な絆とストレスの相関関係についてはさらなる研究が必要としながらも、これにはある程度の理由付けがあると指摘する。ごく大まかに言うと、オスは不安に対し、闘争・逃走反応を示す傾向がある。闘争と逃走はいずれも、社会的な絆を断ち切る可能性がある行動だが、普段のパートナーから離れることも一種の逃走と言える。対照的に、メスの場合は「思いやりと絆」に分類される行動をとりやすい傾向にある。これはアルコールを摂取した後の触れ合いを求める行動にも通じる部分があるだろう。

◆人間の問題行動への応用は

 当然ながら、酒に酔ったプレーリーハタネズミの行動の要因は、同様に酒を飲んだ際の人間とは異なる。人間の場合は、生物学的要因に過去の経験や文化が加わり、複雑に絡み合った相互関係が生じているからだ。だからこそ、齧歯類はこうした行動に関する実験対象として適しているのだという。

「(文化的な要因などを考慮しなくていいことから)プレーリーハタネズミは、我々人間のアルコールに関連した行動だけでなく、その行動の根本にある神経物質の影響について調べる際のモデルとして使える」とリャビニン氏は説明する。「さらなる研究は必要だが、生物学的影響を純粋に文化的な要因から切り離すことで、飲酒行動に関する問題やそれに起因する人間関係の揉めごとについて、より適切な対策がとれるようになる可能性があるはずだ」。

 今回の研究は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」誌オンライン版に4月7日付で掲載された。

Photograph by Joel Sartore, National Geographic

文=Jennifer S. Holland

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