不明機捜索で明らかとなった海洋ゴミ

2014.04.10
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インドネシアのブナケン島付近の海中に浮遊するビニール袋。海洋生物がこのようなゴミを飲み込むと、命を落とす危険性もある。

Photograph by Paul Kennedy, Getty
 マレーシア航空370便が行方不明となる以前、世間が海洋浮遊ゴミの存在に関心を払うことはほとんどなかった。 ところが、オーストラリア沖で目撃された数百もの浮遊物が、捜索していた航空機の破片ではなく、実は投棄された漁具やコンテナの部品、レジ袋などであったことが判明し、行方不明機捜索の過程に新たな逸話が付け加えられようとしている。世界の海には、想像以上に多くのゴミが漂っているという事実だ。そのほとんどはプラスチックで、海洋生物がこれらを飲み込んで、取り返しのつかない事態にまでなっている。

「海洋ゴミにこれほど世界の注目が集まったのは初めてだ。この機会にぜひ、世界の海がゴミ捨て場になっている現状を多くの人に知ってもらいたい。全ての海洋で起こっている問題だ」と話すのは、ワシントン州シアトルにある地球・宇宙研究所(Earth and Space Research)研究員で、海面海流図の研究をしているキャスリーン・ドーハン(Kathleen Dohan)氏だ。

 ドーハン氏は、ゴミが海に投棄されてから10年後に、どのような経路をたどってどこにたどり着くのかをシナリオ化し、コマ取りビデオを作成している。投棄物は、海を漂流して「ゴミベルト」と呼ばれる海域に集まる。大西洋と太平洋にはそれぞれ、北と南に1つずつのゴミベルトが存在する。インド洋のゴミベルトは、アフリカとオーストラリアのほぼ真ん中あたりに漂っている。

 多くのゴミが集まってひとかたまりになって漂流していることから、海上に出現した埋立地のような硬い地盤を想像しそうだが、実際にはきわめて広大な海域に個々のゴミが勝手に動き回り、常に循環している状態だ。そのため、船舶や小さなボートがゴミベルトの中に迷い込み、ゴミに取り囲まれてしまうという状況も起こりうる。

◆太平洋ゴミベルトが最大

 それが実際に起こったのが、昨年夏に開催された太平洋ヨットレースでのことだった。参加したヨットは、カリフォルニア州ロサンゼルスとハワイ州ホノルル間のコース上を漂う太平洋ゴミベルトに遭遇した。木材や電柱、その他のがれきは2011年の日本の震災と津波によるもので、それらがひとかたまりに寄り集まって、テキサス州サイズの巨大なゴミベルトを形成していたのだ。

 ホノルルにあるハワイ大学国際太平洋研究センターの海洋学者ニコライ・マキシメンコ(Nikolai Maximenko)氏は、「衝突報告が十数件あり、中には流木に当たって損傷を受けたヨットもあった」と話す。震災による太平洋の漂流ゴミについて研究しているマキシメンコ氏は、この海域にはいまだに、家屋の柱や材木など、10万から100万本の大型木片が漂流しているだろうと推測している。(Nikolai Maximenko)

「太平洋の瓦礫(がれき)とマレーシア航空機には類似点がある」と、マキシメンコ氏は続ける。「どちらの場合も、衛星画像からはそれと特定するものは何も見つけられなかった。個々の漂流物を追跡するような監視システムがない。このシステムは早晩構築されるべきだ」。

 太平洋ゴミベルトに関しては、1970年代にマサチューセッツ州ウッズホールにあるウッズホール海洋研究所の研究員らがその存在を予想していたが、それを初めて文書に記録したのは、1999年に太平洋横断レースに参加したチャールズ・ムーア(Charles Moore)氏である。

◆トリ、カメ、クジラによるプラスチック誤飲

 使い捨てプラスチックによる環境汚染撤廃に取り組むファイブ・ジャイルズ・インスティテュート(5 Gyres Institute)を創設した海洋科学者のマーカス・エリクセン(Marcus Eriksen)氏によると、世界に存在する5つのゴミベルトのうち、90%はプラスチックゴミだという。「プラスチックは、1950年以降になって現れた、比較的新しい素材だ。それから半世紀経った今、袋やペットボトル、ボトルのふた、キッチン用品など一回きりの使い捨てプラスチックから出たプラスチック微粒子が海にあふれている。タバコのライターが、何百という鳥の骨から見つかっている」。

 ウミガメやカリフォルニア・コククジラも、プラスチックの誤飲で思わぬ犠牲になっているという。

 マキシメンコ氏によると、「魚はプラスチックを噛み砕くので、破片は少しずつ小さくなっていく。ある程度まで細かくなると簡単に飲み込むことができ、腹の中に消えてしまう」という。

 プラスチックの量が最も多いのは、北太平洋ゴミベルトだという。そのほとんどは、アメリカ、カナダ、メキシコ、そしてヨーロッパからやってくる。

Photograph by Paul Kennedy, Getty

文=Laura Parker

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