自閉症“増加”のデータに警鐘

2014.04.07
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アラバマ大学のプログラムの一環として、児童に歌いかけるケメル・ラム(Kiemel Lamb)さん。2011年3月撮影。自閉症児の治療に音楽を利用するのはアメリカでも珍しい。

PHOTOGRAPH BY DUSTY COMPTON, AP
 グループの子どもたちの間で自閉症の発生率が約30%増えているという。ただし、専門家たちはこれほどの劇的な数字を見ても、慌てる必要はほとんどないと口をそろえている。 自閉症の特徴は反復的な行動、社会的コミュニケーション能力の欠如などだ。CDCの報告によれば、アメリカの子供のおよそ68人に1人が自閉症スペクトラムに属しているという。

 調査の対象となった州ごとの差も顕著だ。アラバマ州では自閉症と診断された子供は175人に1人だったが、ニュージャージー州では45人に1人が自閉症の診断を受けた。

 国全体で見れば、自閉症の発生率が増加したのは認知度の高まりや学校でのスクリーニングの拡大による可能性が高いと、CDCは予想している。州ごとに差があることも同様の理由で説明がつく。

◆自閉症の診断が“増加”した調査

 近年、自閉症スペクトラムの診断が急増しているとの調査結果の概要は以下の通り。

 8歳児1000人当たりの患者数は、2002年の6.67人から、2006年8.33人、2008年11.36人、2010年には14.71人となった。

 性別ごとの発生率には顕著な差があり、2010年の8歳児1000人当たりの患者数は、男子が23.7人、女子は5.3人。

 自閉症には医療検査は存在しないが、病歴を基準に照らし合わせることで診断できる。総合評価で自閉症と診断を受けた年齢は、3歳未満が44%、3~4歳が20%、5歳以上が36%だった(2010年)。

 この調査の対象となったのは11州の特定学区であり、全米を代表するデータではない。

◆調査結果の評価

 ニューヨークにあるアルベルト・アインシュタイン医学校の小児評価リハビリセンター(Medicine's Children's Evaluation and Rehabilitation Center)で乳幼児部門の責任者を務めるリサ・シャルマン(Lisa Shulman)氏は、「(州ごとに差があるのは)ニュージャージー州の飲み水に異常があり、アラバマ州の飲み水には異常がないといった理由からではない」と話す。

「診断、評価のシステムや制度が整備されているかどうかの差だ。病気の発見に関しては地理的に大きなばらつきがある」。

◆自閉症の追跡

 CDCは2000年代前半から自閉症の患者数を追跡し始め、2年ごとにその結果を公表している。最新のデータは11の地域を選び出し、8歳児の医療記録を調べた結果だ。

 自閉症の医療検査は存在しないため、精神障害の診断と統計の手引き第5版(DSM-5)の基準を用い、過去にさかのぼって自閉症かどうかを判断した。DSM-5はアメリカ精神医学会が策定したもので、業界標準となっている。

 CDCによる報告は確かに重要だが、決して完璧なものではないと、専門家たちは警鐘を鳴らしている。過去をさかのぼった調査であり、しかも11州しか対象にしていないため、偏った結果が出る可能性があるのだ。

 また、フィラデルフィアにあるA・J・ドレクセル自閉症研究所(A.J. Drexel Autism Institute)の所長クレイグ・ニューシャファー(Craig Newschaffer)氏は、患者数の増加そのものが驚くべき結果ではないと述べる。今回の結果は一連の流れであり、決して患者が急増したわけではないという。両親や学校、組織の認知度が高まった結果、診断が増えたのだろうと、ニューシャファー氏は分析している。

◆さらなる増加の可能性も

 CDCが次にデータを公表する2016年には、自閉症患者の数がさらに増えている可能性が高い。診断の基準が変わり、障害の範囲が拡大され、医師が両親に告知しやすくなったためだ。

 自閉症の環境リスク因子を心配する人々に対しても、専門家たちは注意を促している。カイザー・マーマネンテ・サンタクララ医療センター(Kaiser Permanente Santa Clara Medical Center)の発達小児科医マーク・コーエン(Mark Cohen)氏は、環境も患者数の増加の一因かもしれないが、おそらくその役割は非常に小さいと話す。

「もし患者数が増加しても、私は驚かないし、全く心配しない」。

PHOTOGRAPH BY DUSTY COMPTON, AP

文=Mollie Bloudoff-Indelicato

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