カリフォルニアで地盤沈下が深刻化

2014.03.26
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カリフォルニア州ロスバノス、デルタ・メンドータ運河の堤防(2月25日)。45年前、地盤沈下の対策としてかさ上げ工事が行われた。

PHOTOGRAPH BY JUSTIN SULLIVAN, GETTY
 アメリカのカリフォルニア州中部では現在、地下水の大量くみ上げによって、広範囲に地盤が沈下している。最近公表されたアメリカ地質調査所(USGS)の報告によると、一部の地域では急速に進行しているという。 深刻な干ばつに見舞われている同州では、地下水の需要増に伴って地盤沈下が各地で発生。当局や土地所有者はその対応に追われている。水文学の専門家で報告書の作成責任者を務めたUSGSのミシェル・スニード(Michelle Sneed)氏は、同州の豊かな農業を支えているサンホアキン・バレー一帯でも、想定外の勢いで進行していると警告している。

 州の中部では約3000平方キロの広範囲で沈下している一帯があるが、その速度は年間2.5センチ程度にすぎない。ところがスニード氏が調査を行った約5平方キロの地域では、年間30センチに及ぶという。スニード氏は、「これほどの勢いで進むと、道路や用水路、パイプラインなどのインフラは対応できない」と語る。悪化する状況にさらに拍車をかけているのが干ばつだ。今後も降雨が期待できず水不足が続けば、地下水のくみ上げはさらに活発になるだろう。

◆地盤沈下によって高まる洪水の危険性

 深刻な地盤沈下は既にさまざまな影響をもたらしている。州中部の灌漑区域を管理しているクリストファー・ホワイト(Christopher White)氏によると、人口5400人の町ドスパロスなど低地の過疎地域では洪水の危険性が高まっているという。

 遊水施設の多くが地中に沈み込んでしまった低地では、川が氾濫した場合に十分な量の水を貯留できない。地元当局は、大雨の際に土嚢を積むなど緊急時の対応策を検討中だという。

 また、数百カ所の農場に灌漑用水を供給している水路やダムも、機能不全に陥っているケースがあるようだ。

 サンホアキン・バレーを含むセントラル・バレーには、USGSの調査対象となったデルタ・メンドータ運河がある。州北部からセントラル・バレー一帯の農村や都市部に水を運ぶ運河は、地盤沈下が進行する地帯のすぐ脇を流れている。

 1969年、地盤沈下対策として全長24キロのかさ上げ工事が行われた。だが、運河の管理技師ボブ・マーティン(Bob Martin)氏は、周辺の地盤沈下の勢いが収まらない場合1.2メートルのかさ上げでは不足し、20年以内に再工事が必要になるだろうと語る。

 問題は水害だけにとどまらない。地盤が沈下し、粘土層に囲まれた地中の間隙が消滅すれば、地下水の貯留能力が失われる危険性がある。貯留量が減少すれば、回復までには長い年月を必要とする。「失われた帯水層を取り戻すことはほぼ不可能だろう」とUSGSのスニード氏。当局によると、セントラル・バレー一帯の全供給量の約3分の1は、地下水が占めているという。干ばつによる水不足が続けば、その割合はさらに増加する。

◆今後も長引く課題

 サンホアキン・バレーの地盤沈下は、昨日や今日の話ではない。USGSの調査報告によると、運河で堤防のかさ上げ工事が行われた1969年のおよそ40年前には、既に8.5メートル前後の沈下が複数の地域で観測されている。

 一帯は有数の農業地帯で、1950年代と1970年代には、シエラネバダ山脈の降雪を用水として利用する大規模な水利事業を連邦政府や州政府が実施。農業にも導入されて沈下はおおむね沈静化した。

 だが、用水の利用が以前より困難になったと話す農場経営者もいる。カリフォルニア水機関協会(Association of California Water Agencies)のティモシー・クイン(Timothy Quinn)事務局長によると、シエラネバダの雪が減少しているうえ、絶滅危惧種の生息地保全に多くの用水が使われるようになったからだという。そこへ干ばつの水不足が重なれば、再び地下水を利用し始める農家が増えてもおかしくはないとクイン氏は指摘する。

 地元当局は、地盤沈下の原因となる深層地下水のくみ上げをできるだけ控えるよう土地所有者に働きかけている。

 現在、カリフォルニア州の地下水はその大半が各地域で管理されているが、地盤沈下がさらに進行すれば州による管理が強化される可能性もあるとクイン氏は話す。「干ばつが終息した後もしばらくは危機的な状況が続くだろう」。

PHOTOGRAPH BY JUSTIN SULLIVAN, GETTY

文=Julie Schmit

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