WHO:環境汚染死因1位は料理用燃料

2014.03.26
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小さな家の中で料理をする女性。インド、ムンバイで。

PHOTOGRAPH BY ARKO BATTA, REUTERS
 大気汚染による死者数は、毎年700万人に上る。これは世界の全死者数の8分の1に当たる。大気汚染は、この地球上で健康に悪影響を及ぼす最大の環境リスクと言える。世界保健機関(WHO)が3月25日に発表したこの推計値は、2012年の数値に基づくもの。700万人という数は、WHOが前回報告した2008年の推計値から2倍に増えている。 それ以上に衝撃的なのは、空気の汚染が、犠牲者自身の家の中で起こっていることが多いという指摘だ。死因 の半数以上が、屋内の空気の汚染によるものという。発展途上国では、料理用の燃料として薪や石炭、牛糞など を屋内で使用することが多く、これが主に汚染の原因となっている。

 カリフォルニア大学バークレー校の国際環境衛生学教授カーク・スミス(Kirk Smith)氏は、「キッチンで火 を焚くのは、タバコを1時間に400本燃やすようなものだ」と話す。スミス氏は1970年代から、屋内で薪や石炭や 牛糞などの固形燃料を使う調理の影響を研究してきた。

 WHO「衛生的な環境のための介入」(IHE)部門のコーディネーターを務めるカルロス・ドラ(Carlos Dora) 氏は、同じことをもう少し科学的に表現する。「汚染のもとになる石炭コンロを使う家では、1立方メートル当 たりの微粒子濃度が2000~3000マイクログラムに達することがある」。これは、肺の奥深くに付着する汚染微粒 子(髪の毛の太さの25分の1から100分の1ほどの大きさ。PM2.5に相当)についてWHOが設定した平均濃度の指針 の200倍から300倍に相当する。

 このような微小な汚染粒子を吸い込むことで起こる病気は、肺がんだけではない。肺がんは、大気汚染による 700万人の病死者の死因の6%を占めるにすぎない。死因の大きな部分(69%)を占めるのは、心疾患と脳卒中 だ。

 WHOの前回の報告書以降、大気汚染が心臓血管系の病気を引き起こすという証拠が多く集まってきた。そのこ とも、前回以降、大気汚染による死者数の推計値が劇的に増加した1つの理由となっている。もう1つの理由は、 WHOが都市部以外での汚染の測定法を改善してきたことだ。

「大気汚染と、心臓病や脳卒中との関係を明白に示す疫学的研究が増えている。今では証拠は固まったと言え る。また、汚染の広がり方のモデルが改善され、農村部での観測地点も増えている」と、ドラ氏は説明する。

 汚染物質を出す固形燃料を使って料理をしている人は、世界に300万人近くいる。燃料集めや調理をして過ご すことが多い女性や子供の方が、男性よりも汚染物質にさらされる危険性が高い。しかし、空気の汚染に起因す るとされる死亡率は、男性が49%、女性が42%で、男性の方が高い。これは、一般に男性の方が、喫煙や高脂肪 食など多くのリスク因子を持っているからだと、ドラ氏は指摘する。「1つのリスク因子は、ほかにすでに多く のリスク因子を持っている人に大きく影響するのだ」。

 WHOの報告書は、世界の国別ではなく、地域ごとに汚染の影響を測定している。大気汚染による病死者数は、 太平洋西部、東南アジア、アフリカで合わせて600万人近くに達する。一方、欧米の高所得地域では40万人以下 だった。これらの地域では、法律や各種の規制により大気汚染が減少し、屋内での喫煙が文化的に容認されなく なっているうえ、石炭や牛糞で料理をする人がほとんどいない。

PHOTOGRAPH BY ARKO BATTA, REUTERS

文=Susan Brink

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