宇宙エレベーター、部分的に実現?

2014.03.06
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部分的宇宙エレベーターのイメージ図。このエレベーターの目的は、人工衛星をこの基部から、地上から3万5786キロという静止軌道(半径4万2164キロ)の高さにまで運ぶことにある。

ART: STEFAN MORRELL. SOURCES: BEN SHELEF, PETER SWAN, TED SEMON, INTERNATIONAL SPACE ELEVATOR CONSORTIUM
 “蜘蛛の糸”をたどって月へ旅することも可能になるのだろうか? 人工衛星を静止軌道に運ぶ「部分的な」宇宙エレベーターが、その端緒となるかもしれない。 軌道に使われるケーブルを地上と結ばず、両端を宇宙空間に置くことで、高周回軌道へ物体を送り込むコストを40%カットできるという、新たな研究成果が発表された。

 SF界の巨匠、アーサー・C・クラークが1979年に刊行した小説『楽園の泉』に触発され、複数の科学者が、かなり以前から完全版の宇宙エレベーターの構想について研究を続けている。これは地球の赤道上に位置する地点から宇宙空間に向けて、月との距離の4分の1ほどの長い軌道を設置するというものだ。これに対し、今回提言された部分的な宇宙エレベーターは、長さは完全版の半分以下で、地上と直接結ばれている必要もない。

「完全版の宇宙エレベーターと並行して、部分的な宇宙エレベーターについてもさらに検討を進める価値があるのは間違いない」と、宇宙工学者のスティーブン・コーエン(Stephen Cohen)氏は述べている。コーエン氏はカナダ、モントリオールにあるバーニエー・カレッジの物理学教授で、「The Engineer's Pulse」というブログの著者でもある。同氏は今回の研究に関わっていない。

 宇宙エレベーターの構想が生まれた背景には、宇宙ロケットのコストが高いという事情がある。物体を通信衛星や放送衛星に使われる静止軌道に乗せるには、1キログラムあたり約2万5000ドルかかるのが現状だ。

 モントリオールにあるマギル大学の科学者チームは今回の論文の中で、現在の素材には、静止軌道に達する大がかりな完全版の宇宙エレベーターを実現させるほどの強度はないと述べている。一方で、規模を大幅に縮小した部分的なエレベーターであれば、それほど荒唐無稽な話でもないという。

 論文の共著者であるマギル大学のパメラ・ウー(Pamela Woo)氏は、「これを(完全版の)宇宙エレベーターの実現に向けた、最初の足がかりと捉えることもできる」と述べている。「まずは部分的なエレベーターを作り、そこから地球に軌道を延ばすことも考えられるだろう」。

◆「部分的」宇宙エレベーターの仕組み

 このエレベーターの目的は、人工衛星をこの基部から、地上から3万5786キロという静止軌道(半径4万2164キロ)の高さにまで運ぶことにある。仮に建造された場合、この部分的な宇宙エレベーターは、基部、終端部、テザー(ケーブル)、エレベーター本体(昇降機)という、4つの要素から構成される。

 基部は低周回軌道に置かれ、その高度は地上から160~2000キロ程度だ。テザーと呼ばれるリボン状で高い強度を持つケーブルが、基部と静止軌道より上にある終端部を結ぶ。エレベーターの本体となる昇降機部分は、基部からテザーをたどって上昇し、積み荷を静止軌道に運ぶ。

◆ロケットと比較した利点は

 今回の研究で、ウー氏と、こちらもマギル大学に所属する共著者のアルン・ミスラ(Arun Misra)氏は、低周回軌道から静止軌道まで宇宙機を送るために必要なエネルギーを2つの経路について試算した。1つは、ロケットを用い、機体を直接静止軌道に運ぶ場合で、もう1つは、まず低周回軌道にある基地局まではロケットを使い、そこからは昇降機で静止軌道に運ぶというものだった。

 その結果、多くのケースで、部分的に宇宙エレベーターを用いた方が、従来型のロケットのみを用いた輸送よりもはるかに効率が高かった。「一般的に言って、より長いテザーを用いると、いっそうのエネルギー削減につながる」とウー氏は説明する。

 低周回軌道への衛星打ち上げのコストは、静止軌道と比べても低く、1キログラムあたり5000~1万ドル程度で、これがエネルギー削減にも寄与している。

 さらにコーエン氏によれば、エレベーターを太陽光エネルギーで動かせば、さらにエネルギー効率が上がるという。さらに、地上までつながる完全版のエレベーターであれば、ロケットを全く使わなくて済むので、さらなる効率アップが望めるとのことだ。

 国際宇宙エレベーター・コンソーシアムの会長を務めるピーター・スワン(Peter Swan)氏も同意見で、「ロケットを使い続ける限り、高い打ち上げコストに悩まされる理不尽な状況がずっと続くことになる」と指摘している。

 今回の研究は、2月22日付で「Acta Astronautica」のオンライン版に掲載された。

ART: STEFAN MORRELL. SOURCES: BEN SHELEF, PETER SWAN, TED SEMON, INTERNATIONAL SPACE ELEVATOR CONSORTIUM

文=Joseph Bennington-Castro

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