自然界の不思議な舌

2014.02.27
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水を飲むアフリカのサバンナセンザンコウ。絶滅危惧種。

Photograph by Des and Jen Bartlett, National Geographic
 よく舌を出す有名人といえば、元バスケットボール選手のマイケル・ジョーダン、歌手のマイリー・サイラスが知られている。一番有名なのは、ハードロックバンド「キッス」のジーン・シモンズだろうか。 だが彼らの舌も、その動きや珍妙さでは、動物界のものにはかなわない。ここでその凄さを味わってみよう。

◆センザンコウ

「歩く松ぼっくり」とも呼ばれるセンザンコウはどうしてこんなに可愛いくなれるのか。それは分からないが、子ネコやハリネズミはこの強力なライバルに気をつけたほうが良いかもしれない。センザンコウの丸い背中は見る者皆に衝撃を与える可愛さなのだから。

 センザンコウは全身がケラチンという人間の髪や爪にも含まれているタンパク質でできた鱗で覆われており、身を守るためにボールのように丸くなる。そして異常に長い円錐状の舌を持っている。

 リシャ・コータラースン氏(Rhishja Cota-Larson)は米ナショナル ジオグラフィックのブログでセンザンコウに関する詳細な情報を掲載しているが、その中では次のように書かれている。「舌は自身の骨盤まで届き、伸ばすと体長以上の長さがある。この長い舌を使って餌のシロアリやアリを舐め取るのだ」。

◆カメレオン

 カメレオンは体の色を変化させ周囲に溶け込む能力を持ち、粋な動物だということに異論はない。

 しかしカメレオンの一番の魅力は、その信じがたい、おそらく動物界で最も有名な舌にあると言っていいだろう。舌の長さは体長の1.5倍にも達し、とりもちのような機能を持つ。粘液で覆われたその先端は狙ったどんな獲物にもくっつき、電光石火のスピードで引き戻すと同時に獲物はカメレオンの口に収まる。

 その舌の動きの速さがどれほどか、彼らの歩みの遅さからは想像もつかないだろう。

◆シロナガスクジラ

 シロナガスクジラはこれまでに地球上に存在した動物中最大であり、物凄い舌を持っていても納得がいく話だ。世界自然保護基金(WWF)によると、シロナガスクジラの舌は約2.7トンにもなるという。これはアジアゾウ1頭を上回る重量だ。

 クジラもその巨大な舌を食べるために使うが、その使い方は人間とは少し違う。この海洋哺乳類は大量の海水を取り込むと、その舌を使って海水を(センザンコウの鱗と同じ)ケラチンでできたひげ板のフィルターを通して押し出すことで、彼らの主な食料源であるオキアミという微小な甲殻類を濾し取る。

◆オオアリクイ

 スミソニアン国立動物園によれば、オオアリクイの体は伸ばすと約1.5〜2.1メートル、舌の長さは約0.6メートルだという。つまり舌は体長の3分の1ないしそれ以上の長さにもなる。

 エディンバラ大学によると、オオアリクイには歯がなく、舌が2つの役割を担っているという。舌はトゲで覆われており、餌の昆虫を捕らえるのに役立っている。また粘着性の高い唾液でベトベトしているが、これで獲物を封じ込め、飲み込む前に口蓋で砕いているのだという。

 早口な人を何人か知っているという人には、オオアリクイは1分間に160回もの速さで舌を弾くことができるということを考えてみて欲しい。

◆ウオノエ

 最後に今回のシリーズ中最も奇妙な動物を紹介するが、その動物が奇妙な舌を持っているのではない。それ自身が奇妙な舌なのだ。

 魚類に寄生するウオノエ(学名:Cymothoa exigua)は甲殻類の一種で、エラから魚の中に潜り込むと、舌の部分に掛け金(かけがね)を掛けるようにしてくっつき、血液の供給を断ち切ってしまう。その結果魚の舌は退化していき、寄生したウオノエが舌に成り代わるのだ。

 昨年、北アイルランドのベルファストである男性が魚を購入したところ、この小さなヒッチハイカーが口の中から出てきて、男性をちょっとしたパニックに陥らせるという事件があったが、驚くのも無理はない。しかし、海洋生物学者メリッサ・ベアタ・マーティン(Melissa Beata Martin)氏はオーストラリア博物館のブログで、ウオノエ付きの魚を人間が食べても実際には安全だと述べている。

 そうであっても、ブログ中にある「料理の前にこの寄生生物を取り除いて」というフレーズは、「そちらは前菜に」という意味ではないと信じたい。

Photograph by Des and Jen Bartlett, National Geographic

文=Liz Langley

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