ローレンス・クラウスが語る未来

2014.02.26
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1947年11月、カリフォルニアでテスト飛行するコンベア118型、コンベアカー。この空飛ぶ車は、実際の生産 には至らなかった。

PHOTOGRAPH BY FPG/HULTON ARCHIVE/GETTY
 ローレンス・クラウス氏は多忙な科学者だ。アリゾナ州立大学の理論物理学者かつ宇宙学者として宇宙を研究し、バラク・オバマ大統領の第一回目の大統領選の際には、オバマ陣営の科学政策委員会のメンバーに選ばれ、スティーブン・ホーキング(Stephen Hawking)氏やクリストファー・ヒッチェンズ(Christopher Hitchens)氏などの知識人とも仕事をしてきた。著書に、『The Physics of Star Trek(スタートレックの物理学)』などがある。2014年2月にクラウス氏は、「空飛ぶ車はどこに? 科学、空想科学、変わり行く未来へのビジョン」と題したアメリカ科学振興協会(AAAS)のシンポジウムに出席した。 そのクラウス氏に、未来についてどう考えているか、話を聞いてみた。

◆空飛ぶ車はどうなったのでしょうか?

 空飛ぶ車は、50年前の人々の夢の中にとどまっています。今現在、空飛ぶ車もなければ、宇宙ホテルも実現し ていないのは、現実世界が立ちはだかってしまったためです。技術革新の中には、とにかく思っていたよりもず っと難しく、莫大な費用がかかってしまうものがあるのです。

 でもその反面、実際に起こったことははるかに面白いではありませんか。その最も分かりやすい例として、イ ンターネットはこれまで誰も想像していなかったような変化を私たちの生活にもたらしてくれました。分散型情 報源としてのネットは、目には見えませんが、全てにアクセス可能で、全世界につながっています。情報は瞬時 のうちに伝達されます。

 宇宙旅行といった、SFの世界で誰もが本当に望んでいたものは、ふたを開けてみれば実に簡単な事実によって 実現に至らなかったのです。人間は45キロの水が入った袋に過ぎず、この地球上で生きるように造られているの だということです。

◆空飛ぶ車を願ったのに、代わりにインターネットが生まれてしまいました。望んだこととは違った現実にたど り着いてしまった原因は何だったのでしょうか?

 革新とは、予測可能なところからはまず生まれないということでしょう。予測可能であれば、発見とはいえま せん。私たちは、既知の事実から未来を予測しようとしがちです。次に何が当たるのか分かっていれば、私なら とっくにそれを実行に移しているでしょう。

◆私たちは、地球に何をしてしまったのでしょうか? 気候変動、人口過多、世界的な貧富の差。それに、多く の在来種を他の土地へ運んでしまったことで、動物界にとどまっていたウイルスが人間界へ及び、人類の存在を 脅かすようになったのも、私たち人間の責任かもしれません。これらのことはすでに起こっているか、近い将来 起こるだろうと見られているものばかりです。

 ウイルスについては、それほど心配することもないでしょう。人間は450万年存在してきた、実に丈夫な生き 物です。

◆では、未来には何が起こると予想しますか?

 私たちの知っているこれまでの世界は、人間によって破壊されようとしています。地球は今、新しい時代に入 ろうとしているのは確実ですが、この先どこへ向かおうとしているのかはまだ分かりません。

◆未来に希望を持てそうですか?

 日によってその考えは変わります。いまや世界レベルの問題となり、解決には新しい考え方を必要としている 事柄に、人類が足並みそろえて取り組んでいくだろうとは期待していません。核兵器が開発されたときアインシ ュタインは「我々のものの考え方以外は全てが変わってしまった」と語っています。

 こうした世界的な問題に取り組むために、私たちはもはやものの考え方を変えなければならない時期に来てい るのだと思います。実現可能なことでしょうか。様々な抵抗はあるでしょうが、可能だと思います。私の友人で 作家のコーマック・マッカーシー(Cormac McCarthy)氏は以前「私は悲観主義者だが、だからといって希望を 捨てたわけではない」と話してくれましたが、ある意味私も同じ考えです。

◆500年後に、人類は火星に住んでいると思いますか?

 おそらくは。もし宇宙旅行をするとすれば、それはきっと片道の旅となるでしょう。これまでの人類の歴史を 見ても、人々が愚かしいと思えるほど困難な片道航海に旅立ってきたのは、ただひとつの理由によるものです。 今まで住んでいた場所が余りにひどくみじめな場所なので、もう二度と戻ることはないだろうと承知の上で、彼 らは沈んでしまうかもしれない木の小船に乗り込んで大海を渡り、見知らぬ土地を目指したのです。

 もしかしたら我々も同じような道をたどるかもしれません。人間が、今いる地球をひどく住みにくい場所に変 えてしまい、火星のような苛酷な環境でも魅力的に見えるようになるのかもしれません。

PHOTOGRAPH BY FPG/HULTON ARCHIVE/GETTY

文=Christopher Kemp

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