仲間の心に寄り添うゾウの共感能力

2014.02.24
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ケニア、マサイマラ国立保護区で時間を過ごす大人のアフリカゾウと子ゾウ。

PHOTOGRAPH BY CB PICTURES. WESTEND61/CORBIS
 周知のように、ゾウは危機に瀕している。私たち人間が、戦争に等しい行為を彼らに仕掛けているからだ。その目的は、人間が欲しがりながらも人工的には作り出せない彼らの持ち物、象牙である。 今月初め、アフリカ西部の国・ガボンではこの10年だけで、国内の生息数の半数以上にあたる1万1000頭のゾ ウが死亡したことが分かった。

 アフリカ大陸の至る所でゾウは撃たれ、毒殺され、槍で刺され、そのペースは既に一部の研究者が「生態学的 には絶滅した」と見なすまでになっている。現在、野生のアフリカゾウは50万頭を切っており、実際にはその半 分しかいない可能性もある。アジアゾウは3万2000頭が何とか生存している。

 人間に反撃できない以上、この戦いにゾウは勝つことは有り得ない。

 そして、ゾウが直面している恐怖は彼らの心に確実に蓄積されている。ゾウには互いに共感し合う能力があ り、研究者らはこのほど、ついに実験でもゾウの感情を証明することができた。

◆ゾウの共感能力を示す数多くの例

 だが、なぜ実験が必要だったのだろう。これまでの調査では、明らかにゾウが仲間に感情移入している行動の 例が無数に見られている。別のゾウの痛みや問題を認識し、反応するのだ。互いに助け合おうとして英雄的な行 動を取ることもしばしばである。

 これらの報告だけでは、科学者が「ゾウは人間のように共感能力のある生き物だ」と明言するには不十分なの だろうか。

 残念ながら、その通りだ。

 ゾウや他の動物に共感能力があると断言するには実験が必要で、野生の状態で行うのは難しい。実験を行うの は、こうした行動が偶然の観察ではなく、再現性があると確認するためだ。

 ゾウは他の個体が抱いているのと同じ感情を共有することを示すため、研究者らはタイの公園で飼育されてい るアジアゾウを観察した。草むらでヘビと出くわすなど、何らかの理由でゾウが取り乱した状況に注目して行動 を記録し、パターンがあるかどうか調べた。

 パターンはあった。緊張する出来事が起こると、ゾウは耳を広げ、尾を立たせ、場合によっては低いうなり声 を出す。野生のゾウを観察する研究者も同様のしぐさを報告している。

◆情動伝染

 野生でも飼育下の観察でも、動揺したゾウに対して、近くにいる別のゾウが全く同じ行動で応えるのを研究者 らが確認している。学術的には「情動伝染」と呼ばれる現象だ。

 さらに、彼らは仲間のところに駆けつけて寄り添い、鼻で体に触れて落ち着かせ、優しくさえずるような高い 声を出す。時には自分の鼻を相手の口に入れることもあり、研究者によればゾウが特に心地良く感じる行動だと いう。

 人間も、例えば友人とホラー映画を見るときなど、よく似たことをしている。主人公に危険が迫ると、見てい る側も同じ恐怖を感じる。胸がどきどきし、身震いすることもある。そして、安心しようとして友人の手を握 る。

 それでも、これは真の共感を示す十分な証拠ではないと主張する研究者もいるかもしれない。実験では、仲間 に駆け寄って助けたり、死にゆく同胞を心配したりするとき、ゾウの心の中で何が起こっているのか明らかにな っていないからだ。

 しかし、ゾウは少しでも他者を思いやるよう努めるという事実は、控え目に言っても彼らが非常に敏感かつ情 感豊かで、ある程度お互いを案じる生き物だと示唆している。

◆密猟の危険に気付いているのか

 アフリカゾウが人間から狙われていることや、アフリカ大陸じゅうでゾウが殺されていることを分かっている のかどうか、はっきりと知るすべはない。大半の密猟事件ではゾウはほとんど助からず、逃げおおせたゾウもど れほどの衝撃を受けるのか、人間には分からない。別の群れにいる友達や親類がむごたらしく殺されていたと き、ゾウが森の中で何を見、何を聞いていたのかは、永遠に謎のままだ。

 現在、密猟者がゾウの家族や群れを殺している場所では、何が起こっているのだろう。仲間の苦痛への共感に あふれたゾウは、殺りくの現場を調べに訪れているだろうか。それとも、忌まわしい土地から永久に立ち去って しまうのだろうか。

 そのような研究はまだ行われていない。しかし、まずは人間が共感能力を発揮して、ゾウを救う方法を探って みてはどうだろう。密猟はもう終わりにしようではないか。

PHOTOGRAPH BY CB PICTURES. WESTEND61/CORBIS

文=Virginia Morell

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