今冬の異常気象、原因は北極の温暖化?

2014.02.21
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ロンドン、テムズ川沿いの家々。2014年2月10日に堤防が決壊し、1週間経っても水浸しのままとなっていた。

PHOTOGRAPH BY PETER MACDLARMID, GETTY IMAGES
 今冬の気象ニュースは異例ずくめだ。カリフォルニアでは観測記録のある119年間で最も湿度が低い年となり、シエラネバダ山脈の積雪量は平年の3分の1を下回る少なさとなっている。 アメリカの東側3分の2を襲った1月の寒波により、気温は平年よりも摂氏11~22度低下。大西洋を挟んだイングランドとウェールズでは、少なくとも248年間で最も降水量の多い期間を経験した。

 干ばつ、極寒、破壊的な豪雨と洪水。一見すると「耐え難い悪天候」ということ以外にあまり共通点はなさそうだ。しかし一部の研究者は、最近起こったこれらの現象は1つの気象パターンと関連付けられると主張する。そのパターンはもしかすると、気候変動が原因かもしれない。

 ニュージャージー州、ラトガース大学の大気科学者ジェニファー・フランシス(Jennifer Francis)氏は、寒波、干ばつ、洪水などの気象パターンが以前より長期化しているのは、「北極増幅」すなわち極北での温度上昇が加速し、地球上のどこよりも早いペースで温暖化が進んでいる現象と関連があるとみている。北極の気温が上がると、北極と低緯度地帯との温度差が小さくなり、寒帯ジェット気流という西からの風が弱まる。通常なら西から東へ強く真っすぐに吹くジェット気流が、現在は北半球の広い範囲にわたって蛇行するコースを取っている。

 この現象が起こると「気象パターンの変化に時間がかかるようになる」とフランシス氏。2012年、同氏とスティーブン・バブルス(Stephen Vavrus)氏は、ジェット気流の速度低下と蛇行が、干ばつ、洪水、寒波、熱波といった異常気象の長期化を招いている可能性があると述べた論文を発表して大きな影響を及ぼした。

 フランシス氏は、「今冬はその好例だ」と話す。「ジェット気流が北へ大きく蛇行したため、アラスカは異例の暖冬となった。この気流が太平洋からの嵐をブロックしたため、カリフォルニアの乾燥状態の原因となった。次いでそのジェット気流が南下する際に米国の東側3分の2を覆ったため、北極の冷たい空気が流れ込み、しばらく居座ることになった」。

 大西洋では、寒帯ジェット気流は蛇行によって大きく南下したため、高い高度を流れて大量の水蒸気を運ぶ亜熱帯ジェット気流に平年よりも接近した。フランシス氏は、「通常、こうなると激しい嵐が発生する」と説明する。

 その影響をまともに受けたのがイギリスだ。大雨、強風、高波に見舞われ、大規模な洪水が起こった。イギリス気象庁は今月発表の報告書で、「これらの極端な気象現象は、太平洋と北米に及ぶジェット気流への長期的な変動パターンと関連していた」との判断を示した。冬季オリンピック開催中のソチに温暖な天候をもたらしたのも同じ変動だ。

 フランシス氏は「“北極増幅仮説”とこれらの天候が明らかに関連していると断言はできない」としながらも、「しかし、非常に示唆的な複数の証拠が同一の方向を指しているのは確かだ」と話す。

◆自然な変動なのか

 しかし、国立大気研究センター(NCAR)の上席科学者ケビン・トレンバース(Kevin Trenberth)氏は、北極増幅がジェット気流の異常な動きの原因だとするフランシス氏の仮説に否定的だ。「大気がどのくらい蛇行するかという変動の程度が決まるのに、北極からの影響は必要ない」と指摘する。

 北極との関連を重視するフランシス氏の仮説が正しいかどうかの結論はまだ出せないとしても、地球温暖化が何らかのメカニズムで異常気象を促しているという点では科学者たちは広く一致している。米国海洋大気庁(NOAA)国立気候データセンター(NCDC)のトーマス・ピーターソン(Thomas Peterson)氏は、「これまで我々は、具体的にどの現象が気候変動の結果なのかは特定できないと言ってきた。科学者たちは今、気候変動が異常気象発生の確率を高める度合いを重視している」と語った。

PHOTOGRAPH BY PETER MACDLARMID, GETTY IMAGES

文=Rachel Hartigan Shea

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