マルハナバチはヒマラヤより高く飛べる

2014.02.07
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飛び立つマルハナバチ。オレゴン州デシューツ国立森林公園にて。

Photograph by Michael Durham/Minden Pictures/Corbis
 マルハナバチは地球上で最も高い山エベレストに登り、その山頂より高く飛ぶことができるようだ。 ほとんどの昆虫や鳥にとって、極端に標高の高い場所を飛ぶことは難しい。そのような場所では空気が薄く、酸素が十分でない。また揚力は翅や翼を羽ばたかせ空気を押すことで発生するので、空気が薄くなるほど翅や翼が生み出せる力は小さくなるのだ。

 しかしマルハナバチは高山帯にたくさん生息している。この小さな虫はどうやって標高の高い難所を飛行することができるのか、また単純にマルハナバチはどれほど高い場所まで行くことができるのか、研究者たちは長い間興味を抱いてきた。

「空気密度と酸素濃度が低いことが妨げになって、ハチが飛べる高度は限定されるのではないかと思っていた」と、ララミーにあるワイオミング大学の科学者マイケル・ディロン氏は語る。

「答えは明確にノーのようだ。彼らは物凄く高い場所でも飛ぶことができる」。

 ディロン氏の研究チームの実験では、彼らが採集したハチが海抜7400メートル以上の高度に相当する気圧でも飛べることが明らかになった。これはネパールのアンナプルナ連峰で低い方の山頂の標高に匹敵する。2匹のマルハナバチではなんと9000メートル以上、つまりエベレスト山より高く飛ぶ能力が認められた。

◆薄い空気の中へ

 動物学・生理学助教であるディロン氏は、研究チームの仲間とともに中国四川省、海抜3250メートルの山岳地帯でハチを採集した。マルハナバチの種多様性が高い世界有数の地域だ。

 彼らは採集したハチを現地でプレキシガラス(透明なアクリル樹脂)製の飛翔実験槽に入れ、手動ポンプで徐々に槽内の空気を抜いていき、標高を上げた場合にハチが経験するはずの低い気圧を再現した。

 ディロン氏らはどんどん空気を薄くしていき、標高を上げていくシミュレーションを行った。それはハチが飛べなくなるまで続けられた。

 これまでマルハナバチが観察された最も高い標高は海抜約5600メートルだった。そのためディロン氏らは山岳地帯への最初の調査で、実験槽に使用するプレキシガラスの必要強度を低く見積もり過ぎていた。

 槽内の気圧を低下させていくと、マルハナバチが飛べなくなるより前にプレキシガラスが割れてきてしまったのだという。それでディロン氏らはもっと厚い材料で飛翔実験槽を新しく作成し、再び実験を行った。

◆速くではなく大きく

 マルハナバチがどうやって高地の薄い空気に適応しているかというと、羽ばたきを速くするのではなく、大きな曲線を描いて翅を動かすのだとディロン氏は語る。「彼らは翅を前方には鼻先のあたりまで、後方には腹部の先端近くまで動かしている」という。

 この翅の大きな動きのおかげでマルハナバチはたくさんの空気を動かすことができ、高地でも十分な揚力を得て飛び続けることができるのだろうとディロン氏は考えている。

 最も高い標高で飛べる能力があった2匹のハチでは、その他の個体に比べ体サイズに対する筋肉量が特に多かった。この強い筋肉が翅の大きな羽ばたきを可能にしていたのだろうと考えられる。

 マルハナバチは優れた飛翔能力を持っているが、だからといって危険を冒してまでエベレストの山頂へ向かう理由はない。そんな標高の高い場所に花は咲いていないからだ。ではなぜ彼らはそれほど強い翅の力が必要なのだろうか。

「必要以上の飛翔能力は、標高の問題とは別の見事な飛翔行動に役に立っているのかもしれない」と、ディロン氏は花蜜や花粉で倍になった体重を運ぶような場合を想定して語った。そして、捕食者から逃げなければならない場面でも、余分な飛翔能力は役に立つかもしれないと付け加えた。

 ディロン氏の次の計画では、マルハナバチのもう一つの行動、つまり高地でどのように呼吸し酸素を体の組織へ送っているのかを調査する予定だ。

 今回の研究結果は「Biology Letters」誌2月4日号で報告された。

Photograph by Michael Durham/Minden Pictures/Corbis

文=Sandeep Ravindran

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