弓のポーズを取るこの生徒たち。このようなヨガ実践者は、ストレス軽減や睡眠の改善効果を得られるかもしれない。

PHOTOGRAPH BY RENE JOHNSTON, GETTY IMAGES
 ヨガの恩恵は、ヨガ実践者の精神にのみ存在するのではないことがわかってきた。ヨガをすることで人はリラックスし、心拍数が低下する。これは高血圧患者にたいへんよい効果だ。ヨガのポーズは体の柔軟性と力を高め、腰痛を和らげる。 調査結果の評価に生物学的尺度の測定を用いた過去最大のヨガ研究が実施され、瞑想的な太陽礼拝のポーズや下を向いた犬のポーズに、怪我や刺激に対する体の反応である炎症を抑える効果があるらしいことがわかった。

 炎症は心疾患や糖尿病、関節炎を含む慢性疾患に関連性があるため、今回の発見は重要と言える。炎症は、癌患者の多くが治療後数ヶ月、ときには数年間にも渡って疲労を感じる原因の一つでもある。

 研究チームは、ヨガを実践したことのない乳癌克服後の患者200名を対象に調査を行った。そのうち半数からなるグループはその後もヨガを実践せず、残る半数のグループは週に2回、90分間のヨガレッスンを12週間受け、DVDを自宅に持ち帰って家でも実践するように勧められた。

 オハイオ州立大学の神経科学・心理学教授ジャニス・キーコルト・グレーザー(Janice Kiecolt-Glaser)氏が率い、「Journal of Clinical Oncology」誌に発表した研究によると、ヨガを実践したグループは治療終了から3ヶ月後の報告で、ヨガをしなかったグループほど疲労を感じず、元気だとする人が多かった。

◆検査結果が示す証拠

 しかし、この研究は被験者自身による報告に留まらなかった。キーコルト・グレーザー 氏の夫で研究パートナーでもある同大学の分子ウイルス学・免疫学・遺伝医学教授ロナルド・グレーザー(Ronald Glaser)氏は、より有力な検査による証拠を得ようと、炎症マーカーとして知られる血中タンパク質である3種類のサイトカインについて調べた。

 研究の前後に血液検査を行った結果、ヨガを3ヶ月実践した後では、3つの炎症マーカー値がいずれも10〜15%低下していることがわかった。これは、ヨガの効用に関し実践者自身がどう感じているかという報告に加え、大規模研究の成果として希少な生物学的証拠をもたらした。

 ヨガがなぜ乳癌克服後の患者の炎症度を低下させるのか、はっきりとはわかっていないが、キーコルト・グレーザー氏は研究結果からいくつかの説明が考えられると述べる。癌治療はしばしば患者に大きなストレスや疲労、睡眠障害をもたらす。「睡眠不足により疲労が溜まり、疲労により炎症が悪化する」。ヨガはストレスを低下させ、睡眠の質を改善することが明らかになった。

 その他の小規模な研究においても、バイオマーカーを測定することで、熟練したヨガの実践者は初心者に比べてストレスによる炎症反応が低いことや、ヨガが心不全患者の炎症度を低下させ、また、糖尿病患者において決定的な血糖値とインスリン値を改善させる可能性があることが示されている。

◆その他のストレスに対するヨガの効果

 癌がストレスの原因となり得ることは 明白であるが、最近の研究で貧困もまたストレス要因であることが指摘された。オハイオ州立大学の臨床家庭医学准教授マリアンナ・クラット(Maryanna Klatt)氏は、社会的に不利な子ども達の教室にヨガを導入した。発表が待たれるこの研究では、教師と一緒にヨガを行った低所得家庭の小学三年生160名に注意力の改善がみられたという。

「教師達は、算数の授業の前にヨガをさせると児童が算数の勉強によく集中できるようになったと言っている。子どもにじっと座っていなさいと言っても無意味で、立って身体を動かすのがよい」とクラット氏は述べる。

 児童のヨガへの生物学的反応を測定するのは手がかかりすぎるため、クラット氏は同様の研究を患者の苦しみや死に日々接してストレスに曝されている外科看護婦を対象に行った。その結果、ストレスに対する闘争・逃走反応の尺度となる唾液中のアルファ・アミラーゼが、ヨガを行うことで40%低下したことが明らかになった。

 同氏はさらに、コロンバス市のゴミ収集職員に対し、朝の業務へ出勤する前にヨガのレッスンをすることを始めている。現在、市との間のこの取り決めは研究の対象には含まれていない。職員達のストレスを軽くしたいという気持ちから始めた活動であり、職員の炎症反応を調査したい気持ちはあるが、その予定はないと述べている。

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文=Susan Brink