キリンの殺処分に見る動物園の現実

2014.02.13
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オンラインでの署名活動も実らず、コペンハーゲン動物園は9日、キリンのマリウスを殺処分し、来園者の前 で解体した。

PHOTOGRAPH BY KELD NAVNTOFT/AFP/GETTY IMAGES
 数日前、コペンハーゲン動物園で若いオスのキリン、マリウスが殺処分されたとき、世界中が息をのんだ。世界中から反対の声が届いていたというのに、動物園と飼育係はどうしてこのようなことができたのだろうか? 動物園は動物たちの安息の地であり、動物たちは愛され、守られていると、多くの人が考えている。また、動 物園は教育の場でもあると自称している。なかなか目にする機会がない生き物を見て学ぶことができる場所だ。

 さらに、動物園は絶滅寸前の種が命をつなぐことができる唯一の場であると主張している。

 そして、それこそが動物園の存在意義だという。地球上で最も希少な種の保護者として、いつか野生に戻した いという一心で飼育し、繁殖させているのだ。動物園は種とその遺伝的な変異性を維持する最善の方法、場合に よっては唯一の方法であると、われわれは教えられている。

 では、なぜ動物園が若い健康なキリンを殺すのだろうか?

 コペンハーゲン動物園の科学ディレクター、ベンクト・ホルスト(Bengt Holst)氏がその答えを示したが、 かえって不安になる内容だった。まず、マリウスの種アミメキリン(学名Giraffa camelopardalis reticulata)は野生で絶滅の危機に瀕していない。次に、コペンハーゲン動物園はキリンの“余剰”を抱えてお り、中でもマリウスと遺伝的に類似したオスが多い。マリウスは動物園の飼育プログラムに沿っていなかった。 生後18カ月になったマリウスはもはやぬいぐるみのような赤ん坊ではなく、間もなく交尾をしたがるようにな る。

 コペンハーゲン動物園の計算では、マリウスは生きているより死んでもらう方が都合が良かった。

 そこで飼育係は、好物のライ麦パンでほかのキリンがいない場所にマリウスを誘い出した。マリウスが長い首 を下げ、飼育係から餌をもらおうとしたとき、獣医が頭を狙って空気銃を放った。

 獣医はマリウスを解体し、子供を含む来園者にキリンの体の構造を説明してみせた。ホルスト氏はこの解剖の 講義について、「動物に関する知識とともに、生死にかかわる知識を深めることができる」と説明している。解 剖されたマリウスの死体はライオンの柵の中に投げ込まれた。もしマリウスが本来の生息地であるアフリカのサ バンナで暮らしていたら、同じような運命をたどった可能性が高いと述べる人たちもいる。

◆動物園の目的とは?

 確かにその通りかもしれない。しかし、マリウスが暮らしていたのはアフリカのサバンナではない。“高い水 準、質での動物の飼育”と倫理で“知られ、尊敬される”ことを使命とする動物園だ。

 これらすべてが問題を提起している。なぜ野生で絶滅の危機にないアミメキリンを動物園で飼育するのか? なぜマリウスの両親に交尾させたのだろう?

 コペンハーゲン動物園のフェイスブックのページを見ればその答えがわかる。2012年までさかのぼると、キリ ンの赤ん坊(もしかしたらマリウスかもしれない)の誕生を祝福している。人はあらゆる赤ん坊に引き付けられ ることは、科学が証明している。大きな目、柔らかい手足、ふわふわの産毛がたまらなく好きなのだ。

 また、コペンハーゲン動物園は絶滅寸前の動物を保護する聖域であることを誇りにしているかもしれないが、 ボーン・フリー財団(Born Free Foundation)は2011年、全く異なる報告を行っている。国際自然保護連合 (IUCN)のレッドリストで「世界的に絶滅の危機にさらされていると分類されている種は、ヨーロッパの動物園 で飼育されている種の平均13%にすぎない」という。

 では、種の保存に努めているという動物園の主張が真実でないとしたら、動物園の目的はいったい何だろう?

 おそらくコペンハーゲン動物園の飼育係や獣医、ディレクターは全員が動物好き、動物愛護者を自認している だろう。彼らは実際、囚われの生活を運命づけられた動物たちの世話というハードな、時に胸の張り裂けるよう な仕事を続けている。そして、同時に採算性という別の目的を持っている。

 この2つの目的はぶつかり合う運命にある。動物の飼育には費用が掛かるためだ。長生きすればなおさらだ。 コペンハーゲン動物園が述べているように、動物たちに子育ての経験をさせようとしたら、動物園の限られた空 間がいっぱいになってしまう。すぐに大人の動物であふれ返り、客を呼び、利益をもたらす人気の赤ん坊を十分 に飼育できない。

 遺伝学や入念に練られた飼育プログラムは別として、マリウスが死ななければならなかった本当の理由は、単 に人々を魅了する旬の年頃を過ぎたことではないかと疑わずにはいられない。

PHOTOGRAPH BY KELD NAVNTOFT/AFP/GETTY IMAGES

文=Virginia Morell

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