2013年12月15日、コニーアイランドのビーチで寒中水泳の後、震えながら体を拭くコニーアイランド・ポーラ ーベア・クラブのメンバーたち。

PHOTOGRAPH BY ERIC THAYER, REUTERS
 厳しい冬の寒さが続く中、暖かい気分になれそうな話がある。寒さにがたがた震えるだけで、ダイエットの効果があるかもしれないというのだ。 最新の研究報告によれば、寒さの中15分間すごすだけで、1時間運動したのと同じだけの代謝効果があるとい う。どちらの場合も、2種類の主な脂肪組織、いわゆるぜい肉に作用する。

 腰や腿、腹にブクブクとつく白色脂肪はエネルギーを貯蔵し、褐色脂肪は刺激を与えると熱を発しカロリーを 消費する。幼児はこの褐色脂肪を豊富に保有しているが、成人にはあまり多く見られない。

 アメリカ国立衛生研究所(NIH)で昨年行われた実験では、健康な男女10人の被験者が、まず摂氏18度の室内 で運動し、次に身体に震えの起こる12度の室内で、ベッドに横になって過ごした。

 実験ではどちらの場合も、被験者の筋肉は収縮し、イリシンというホルモンが分泌された。このイリシンは、 体温を上昇させて白色脂肪細胞から褐色脂肪細胞(鉄が多く含まれていることから褐色になる)を作り出す。

「Cell Metabolism」誌に2月4日付けで掲載された記事は、褐色脂肪とその効果に関する最新の研究報告であ る。ほんの数年前まで、人間は生まれてまもなく褐色脂肪を失うと考えられていたのだが、2009年に「New England Journal of Medicine」誌に発表された画期的な研究報告によって、多くの(または全ての)成人が、 量の違いこそあれ、褐色脂肪を豊富に保有しているということが分かってきた。

 震えの科学についてもう少し詳しく知るために、今回の研究の執筆責任者であるフランセスコ・セリ (Francesco Celi)博士に話を聞いた。博士は、国立糖尿病・消化器・腎疾病研究所の元臨床医で、現在はバー ジニアコモンウェルス大学医学部で代謝・内分泌学部長を務めている。

◆2012年に、マウスの褐色脂肪に関する重要な研究がありましたが、それがどのようにして今回の研究につなが ったのでしょうか?

 2年前のマウスの運動に関する研究では、骨格筋がイリシンというホルモンを分泌するという興味深い発見が なされています。このイリシンは、褐色脂肪の活動と量を活性化させます。

 けれど、骨格筋のような熱を産生するものが、褐色脂肪などエネルギーを消費してさらに熱を発生させるホル モンを作り出すというのは理にかなっていないと思っていました。

 そこで視点を変えて、別の筋肉活動に焦点を当ててみました。それが震えです。震えは寒さによって起こりま す。原始的な生物学的生存のメカニズムで、中核体温を一定に保つ役割を果たします。低体温症を防ぐのには絶 対に欠かせないものです。

 そこで私たちは、運動よりもむしろ震えがイリシン分泌を促進しているのではないかと考えたのです。

◆成人の中には、褐色脂肪が多く、ブドウ糖の少ない人がいますが、それはなぜなのでしょう?

 まず、本当に全ての成人が褐色脂肪を持っているかどうかはまだ分かっていません。痩せている人のほうが、 体重の重い人より多く持っているということだけは分かっているのですが、それも遺伝的なものなのか他の理由 によるものなのかは不明です。

 また、成人の褐色脂肪が慢性的に活性化することでどのような効果があるのかも分かっていません。けれど、 そこが重要な点です。褐色脂肪の活性化によってどのような代謝的変化が起こるのか、それを全て知ることが今 後の研究課題です。

 今のところ、それが代謝の改善、そして体重減少やその維持へとつながるのではないかと期待されています。

◆この研究の中心であるイリシンとはいったいなんでしょうか? どのような働きをするのでしょうか?

 イリシンとは、運動または震えによって筋肉が収縮することで分泌されるホルモンです。分泌されたイリシン は血中を移動し、白色脂肪を褐色脂肪に変える働きをします。

◆将来的に、この研究結果が私たちの健康に意味するものは何でしょうか。

 今回の発見が、体重減少やその維持に役立つかどうかはまだ分かりませんが、代謝の大幅改善につながるかも しれないという点だけでも将来性はあると思います。それによって糖尿病、肥満、脂肪肝などの治療にも期待が かかるでしょう。しかし、その効果の現れ方に遺伝的要素が関わっているのかということは、まだ研究の余地が あります。

PHOTOGRAPH BY ERIC THAYER, REUTERS

文=Jeremy Berlin