アフガン新法、女性にとって致命的

2014.02.10
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カブールを拠点とする女性の人権団体「アフガン女性を救う女性たちの会」(Women for Afghan Women)が運営するシェルターで初めてビビ・アイシャ(Bibi Aisha)さんと対面したとき、彼女は19歳だった。彼女はタリバンの兵士と12歳で結婚したその日から虐待を受けた。隣人の助けを求めて逃走を試みると、夫に鼻と耳、髪の毛を切り落とされた。アイシャさんはその後アメリカへ渡り、再建手術を受けた。

PHOTOGRAPH BY LYNSEY ADDARIO, NATIONAL GEOGRAPHIC
 ナショナル ジオグラフィックの写真家リンジー・アダリオ(Lynsey Addario)氏によれば、アフガニスタンの議会で可決された新法がハーミド・カルザイ大統領の署名によって成立すれば、家庭内暴力の被害者は事実上黙殺されることになるという。 アダリオ氏は14年前にタリバン支配下のアフガニスタンを初めて訪れ、以来毎年足を運んでいる。その間にアフガン女性の人権や保護は強化され、今では多くの女性が教育を受け、仕事に就けるようになった。

 ところが昨年、国連の報告ではアフガニスタンでの女性に対する暴力の報告件数が28%増加したにもかかわらず、告訴はほとんど増加しなかった。そして今、些細だが重大な変更が刑法に加えられようとしている。これが現実となれば、すでに家庭内暴力が蔓延したアフガニスタンでの告訴はほぼ不可能となる。

 2009年に可決された女性に対する暴力撤廃法(EVAW)は、未成年者の結婚や強姦、その他の女性に対する暴力行為を法的に罰する画期的な法律だ。

 しかし、法律は執行されない限り効力を持たない。自身が数年にわたって記録してきた数々の得難い進歩を今回の法案がいかに後退させることになるのか、アダリオ氏に話を聞いた。

◆アフガニスタンの議会が可決した新法について教えてください。

 簡単に言ってしまえば、女性が暴行を受けたり強姦されたりした場合に親戚が証言することを禁じる法律です。実質的には、誰も証言することができなくなります。なぜなら、女性が会うのは親戚だけであり、女性は親戚の目にしか触れないからです。加害者は多くの場合が家族であり、目撃者も親戚に限定されます。女性が暴行を受けている間やその後の内情に通じているのは、彼らだけなのです。この新法は、家庭内の女性に何をしてもよいと非直接的に認めるものです。告訴される心配がなくなりますから、加害者は野放し状態になります。

◆あなたがこれまでにアフガニスタンで目にしたことを踏まえると、この法律は女性にとって何を意味すると思いますか?

 アフガニスタンでは至る所で暴力行為が起きています。2年以上にわたるナショナル ジオグラフィックの取材で約300人の女性にインタビューをしましたが、彼女たちは極めて高い割合で繰り返し殴られたり、何らかの虐待を受けたりしていました。殴る行為はかなり蔓延しているようでしたが、理解しがたい現象です。男性の通訳者に聞くと、心的外傷後ストレス障害(PTSD)や戦争、あるいは文化的要因によるものかもしれないとのことでした。今回の新法が成立すれば、こういったことが行われても加害者には何の影響も及ばなくなります。

◆2009年に女性に対する暴力撤廃法が制定されたにもかかわらず、なぜこのようなことになってしまったのでしょうか?

 戦争とタリバン支配の終了に象徴される2000年か2001年までさかのぼる必要があると思います。女性の人権擁護に関する前進は見られたものの、実際には実施されていないものが多くを占めています。暴力を受けた女性たちには行く場所もありません。アフガン女性を救う女性たちの会などが運営するシェルターもありますが、アフガニスタンの中で広く受け入れられているものではありませんし、常に攻撃や閉鎖の危険にさらされています。

 夫から日常的に暴力を受けていたとしても、女性が離婚を求めるのは容易なことではありません。離婚は社会の中で受け入れられていないのです。もし離婚を求めたとしたら、たいていは恥をかかせたとして家族に殺されるか、刑務所に入れられます。今後、国際社会はアフガニスタンから撤退しますから、国民は自分たちで決断する必要に迫られます。これが彼らの決断なのだとしたら、非常に恐ろしいことです。アフガニスタンの女性にとってゾッとするような未来になるでしょう。

◆法律は成立すると思いますか?

 それはわかりません。人権保護団体がカルザイ大統領に対して反対を主張し、署名しないよう求めています。しかし彼はこのところずいぶん傲慢ですから、何とも言えません。

◆女性のシェルターでは極端な暴力を目にしましたか?

 はい。信じがたい、行き過ぎた暴力です。熱した金属で焼かれた女性。集団で強姦された女性。鼻を削ぎ落とされた女性。何でもありです。本当に何でもありです。人間が別の人間、まして女性に対してこんなことができるとは想像もしませんでした。何年にもわたりシェルターを定期的に訪れましたが、その度に涙が流れましたし、悲しみで何もできなくなりました。一歩進むごとに十歩後退しているという現状です。彼らはどこかの時点で、前に進むことを自ら選ばなければなりません。

PHOTOGRAPH BY LYNSEY ADDARIO, NATIONAL GEOGRAPHIC

文=Eve Conant

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